【1】制度規定

【わかりやすく解説】4号特例(建築基準法6条の4)

4号特例

4号特例の概要

4号特例とは、建築確認・完了検査において小規模建築物(4号建築物)の一部の規定の審査・検査が省略される制度のことです。

4号建築物については以下の記事で解説しています。

【わかりやすく解説】法6条区分(建築基準法6条) 法6条区分 法6条区分とは、建築物が法6条1項の一号から四号のいずれ(どの区分)に該当するかということです。 ...

また構造関係規定(法20条関係)の4号特例については、少し複雑なため以下の記事で別途詳しく解説しています。

【わかりやすく解説】4号特例(構造関係規定) マツリ 構造関係規定(法第20条関係)の4号特例については、4号建築物であっても適用する構造基準や構造方法によって適用できない場合があ...

条文で確認

確認審査の特例は法第6条の4第1項に規定されています。(完了検査・中間検査の特例は法第7条の5に規定されています)

確認の特例(法第6条の4)

(建築物の建築に関する確認の特例)第6条の4

第1項 第一号若しくは第二号に掲げる建築物の建築、大規模の修繕若しくは大規模の模様替又は第三号に掲げる建築物の建築に対する第6条及び第6条の2の規定の適用については、第6条第1項中政令で定めるものをいう。以下同じ」とあるのは、「政令で定めるものをいい、建築基準法令の規定のうち政令で定める規定を除く。以下この条及び次条において同じ」とする。

第一号第二号 省略

第三号 第6条第1項第四号に掲げる建築物で建築士の設計に係るもの

法第6条の4はいわゆる読み換え規定です。法第6条1項1(建築確認の規定)の条文を読み換えます。

全ての4号建築物が4号特例を受けれるわけではありません。法第6条の4第1項第3号に該当する建築物でなければなりません。

4号特例が適用できる建築物 ▶︎ 建築士が設計した4号建築物

法第6条の4第1項本文を読み替えて一部を省略すると以下のようになります。

(建築物の建築等に関する申請及び確認)第6条読み換え、一部省略

第1項 建築主は、第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(建築基準法令の規定その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で建築基準法令の規定のうち政令で定める規定を除く。以下この条及び次条において同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。

一般の建築建築物(1〜3号建築物)は建築確認で建築基準関係規定に適合することの確認を受ける。一方で、建築士が設計した4号建築物は政令で定める規定を除いた建築基準関係規定に適合することの確認を受けることになります。

4号特例の対象規定(令第10条)

第10条 法第6条の4第1項の規定により読み替えて適用される法第6条第1項(法第87条第1項及び法第87条の4において準用する場合を含む。)の政令で定める規定は、次の各号(法第87条第1項において準用する場合にあつては第一号及び第二号、法第87条の4において準用する場合にあつては同号。以下この条において同じ。)に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める規定とする。

第一号、第二号 省略 

第三号 法第6条の4第1項第三号に掲げる建築物のうち防火地域及び準防火地域以外の区域内における一戸建ての住宅(住宅の用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が、延べ面積の1/2以上であるもの又は50㎡を超えるものを除く。) 次に定める規定

 法第20条(第1項第四号イに係る部分に限る。)、法第21条から法第25条まで、法第27条、法第28条、法第29条、法第31条第1項、法第32条、法第33条、法第35条から法第35条の3まで及び法第37条の規定

 次章(第1節の3、第32条及び第35条を除く。)、第3章(第8節を除き、第80条の2にあつては国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定する基準に係る部分に限る。)、第4章から第5章の2まで、第5章4(第2節を除く。)及び第144条の3の規定

 法第39条から法第41条までの規定に基づく条例の規定のうち特定行政庁が法第6条の4第2項の規定の趣旨により規則で定める規定

第四号 法第6条の4第1項第三号に掲げる建築物のうち前号の一戸建ての住宅以外の建築物 次に定める規定

 法第20条(第1項第四号イに係る部分に限る。)、法第21条、法第28条第1項及び第2項、法第29条、法第30条、法第31条第1項、法第32条、法第33条並びに法第37条の規定

 次章(第20条の3、第1節の3、第32条及び第35条を除く。)、第3章(第8節を除き、第80条の2にあつては国土交通大臣が定めた安全上必要な技術的基準のうちその指定する基準に係る部分に限る。)、第109条、第5章の4(第129条の2の4第1項第六号及び第七号並びに第2節を除く。)及び第144条の3の規定

 法第39条から法第41条までの規定に基づく条例の規定のうち特定行政庁が法第6条の4第2項の規定の趣旨により規則で定める規定

令第10条第3号に該当するか令10条第4号に該当するのかによって特例対象の規定が異なります。

①  一戸建ての住宅
(※)
  ② ①以外  
防火・準防火地域以外令10条3号令10条4号
防火・準防火地域令10条4号令10条4号
(※)住宅の用途以外の用途に供する部分の床面積の合計が、延べ面積の1/2以上であるもの又は50㎡を超えるものは除く。

令10条3号の建築物(防火・準防火地域以外の戸建ての住宅)は令10条4号の建築物に比べ特例の対象規定が多いです。

の特例対象規定です。

特例対象の条項令10条3号の建築物令10条4号の建築物
第20条
第1項第4号イに係る部分に限る。
第21条
第22条
第23条
第24条
第25条
第27条
第28条第1項、第2項
第28条第3項、第4項
第29条
第30条
第31条第1項
第32条
第33条
第35条
第35条の2
第35条の3
第37条
第39条〜第41条

○:特例対象、ー:特例対象でない(=審査対象)

続いて、政令の特定対象規定です。

特例対象の条項令10条3号の建築物令10条4号の建築物
第2章
(第20条の3、第1節の3、第32条、第35条を除く)
第20条の3
第3章
(第80条の2、第8節除く)
第80条の2(※)
第4章
第5章
(第119条除く)
第119条
第5章の2
第5章の4
(第129条の2の4第1項第6号、第7号除く)
第129条の2の4第1項第6号、第7号
第144条の3

○:特例対象、ー:特例対象でない(=審査対象)、※:国道交通大臣が指定するもの(H19国交告第1119号)

注意:「特例の対象となる規定は確認を受けることが除外(省略)されるだけ」です。基準の適用が除外されるわけではありません。

構造規定(法20条)の4号特例は少し複雑

構造規定に関して4号特例が適用できるのは構造規定の中でも以下に部分だけです。

  • 建築士が設計した建築物で法20条1項四号イに係る部分

かつ、法80条の2を適用する特殊な構造方法の建築物については、以下の構造の部分で各告示に示された仕様規定を満足する建築物。

  • プレストレストコンクリート造
  • 型枠壁工法、木質プレハブ工法
  • 壁式鉄筋コンクリート造
  • アルミニウム合金造

以下の記事で詳しく解説しています。

【わかりやすく解説】4号特例(構造関係規定) マツリ 構造関係規定(法第20条関係)の4号特例については、4号建築物であっても適用する構造基準や構造方法によって適用できない場合があ...

令和3年6月30日にH19国交告第1119号が改正されアルミニウム合金造が追加されました。戸建て住宅等に付属するカーポートやサイクルポートはアルミニウム合金造のものが多く4号特例の恩恵を受けることができます。

4特例の問題点

上記でも解説しましたが、4号特例は審査の省略です。基準の適用の省略ではありません
設計者でも勘違いされている方もいると思います。

比較的小規模で、設計もそこまで複雑でない建築物であれば、資格者である建築士が設計すれば、審査するまでもないだろうという建築士に対する信頼が前提の規定です。
規定ができた背景には昔は、指定確認検査機関がなく、全て役所(建築主事)が審査しており、役所のマンパワーが不足しており、高度経済成長期の経済活動を滞らせないためといった背景があったようです。

設計者の勘違いも問題なのですが、さらに問題なのがこの4号特例を悪用する業者です。建築費用を抑えるなどの理由だと思われますが…。実際に審査が省略される規定の違反が発覚し建築士が処分されることもあります。

特に構造規定(法20条)に関する規定は問題で、大きな地震が起きた際に倒壊した戸建住宅は4号特例の適用を受けた建築物で構造規定(法20条)に違反しているものだったという調査結果あります。人間の生死に係る問題で、設計者のコンプライアンス意識が問われます。

4号特例が廃止される?

4号特例に問題があることは国交省も調査し把握しています。これまでも調査を重ね4号特例の廃止や規模縮小を検討してきました。ただ業界団体の要望などもあるのだと思われますが法改正には至っていませんでした。(設計図書の保存に関する規定の厳格化の改正はされましたが…。)

ただ、令和4年6月に法改正がありました。木造の4号特例の規模縮小が盛り込まれています。(まだ施行されていません)(令和4年7月修正加筆)

建築:脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)について – 国土交通省 (mlit.go.jp)

木造の4号特例の 対象規模の現行と案の対象規模を比較したものです。(その他高さ関係の制限もありますが簡略化のため省略しています。)

木造建築物の4号特例の法改正前後の比較
R4改正まとめ
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私が参考にしている本

私がいつも参考にしている本です。表や図が多くわかりやすい内容ですが建築基準法に不慣れな方にとってはまだまだ専門用語が多く理解に苦しむ方も多いと思います。もちろん私もその一人です。本サイトがそういった方に建築基準法やこれらの参考書との架け橋としての役割を担っていけば幸いです(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコ