【4】構造耐力関係規定

【建築基準法の基本がわかる】増築等の既存遡及(構造規定)

増築時の構造規定の遡及

本記事では、増築(同一棟増築)の際の構造規定の適用についてわかりやすく解説しています。

概要

理解するためのポイント

  • 「法第86条の7」により、既存建築物に増築等する場合、既存部分の構造規定の適用について一定の緩和措置がある。
  • 構造規定適用の緩和措置は、増築面積・増築方法などによって異なる

「法第20条についての既存不適格の建築物」を「同一棟の増築等」する場合、増築部分については、原則、法第3条第3項によって現行の構造規定が適用されますが、既存部分については、法第86条の7を適用することで「一定の緩和措置」を受けることがでます。

  • 増築部分 ▶︎ 現行の構造規定が適用される
  • 既存部分 ▶︎ 増築面積・増築方法などによって緩和がある

この「一定の緩和措置(既存部分に適用される規定)」については、増築面積・増築方法などにより異なり、具体的には、法第86条の7に基づき、令第137条の2H17国交告第566号に定められています。

増築面積・増築方法により大きく5つに分類されます。基準時の1/2以下増築の場合については建築物の種類・増築方法をさらに細かく分類して適用する規定を定めています。

原則、増築面積が小さい方が緩和が多く、また、構造方法が、EXPJのような既存の構造躯体への影響が少ない増築方法の方が緩和が多いです。

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増築面積・増築方法による分類

増築面積・増築方法により大きく5つに分類されます。基準時の1/2以下増築の場合については建築物の種類・増築方法をさらに細かく分類されます。本解説では大きく次の8つに分類して解説していきます。

分類増築・改築面積の制限など増築・改築方法根拠条項
なし制限なし
(原則、構造一体)
令第137条の2第1号イ
▶︎H17国交告第566号第1
なし構造分離(EXPJ)令第137条の2第1号イ
▶︎H17国交告第566号第2
③-1基準時の延べ面積の1/2以下制限なし
(原則、構造一体)
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3
③-2基準時の延べ面積の1/2以下架構の部材の変更なし令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3
③-3基準時の延べ面積の1/2以下
法第20条第1項第4号の木造建築物
制限なし
(原則、構造一体)
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3
③-4基準時の延べ面積の1/2以下
法第20条第1項第4号の建築物
制限なし令第137条の2第2号ロ
基準時の延べ面積の1/2以下構造分離増築(EXPJ)令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3
基準時の延べ面積の1/20以下
かつ
増築面積50m2以下
制限なし令第137条の2第3号ロ

次からは、上の8つの分類別に基づいて、増築部分・既存部分に適用される基準を整理していきます。

①(面積制限なし、構造一体)

増築部分

基準の分類適用される基準根拠規定緩和
構造計算基準令第3章第8節令第137条の2第1号イ(1)なし
仕様規定令第3章第1節〜第7節の2令第137条の2第1号イ(2)なし
建築設備令第129条の2の3令第137条の2第1号イ(2)なし
その他法第40条に基づく条例の規定(構造耐力に関する規定)令第137条の2第1号イ(2)なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
構造計算基準令第3章8節令第137条の2第1号イ(1)なし
仕様規定耐久性等関係規定令第137条の2第1号イ(2)あり
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第1号イ(3)
▶︎H17国交告第566号第1第1号
あり
屋根ふき材など、特定天井・屋根ふき材など
▶︎S46建告第109号など
・特定天井
▶︎H25国交告第771第3号など
令第137条の2第1号イ(3)
▶︎H17国交告第566号第1第2号
あり

②(面積制限なし、EXPJ)

増築部分

基準の分類適用される分類根拠規定緩和
構造計算基準・仕様規定令第3章令第137条の2第1号ロ(2)なし
建築設備令第129条の2の3令第137条の2第1号ロ(2)なし
その他法第40条に基づく条例の規定(構造耐力に関する規定)令第137条の2第1号ロ(2)なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
構造計算基準①から③のいずれか
①令第3章8節
②地震時:令第3章8節
 地震時以外:令第82条第1号〜第3号
③地震時:耐震診断・改修または新耐震基準
 地震時以外:令第82条第1号〜第3号
令第137条の2第1号ロ(3)
▶︎H17国交告第566号第2第1号
あり
仕様規定耐久性等関係規定令第137条の2第1号ロ(3)あり
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第1号ロ(3)
▶︎H17国交告第566号第2第2号
あり
屋根ふき材など、特定天井
・屋根ふき材など
▶︎S46建告第109号など
・特定天井
▶︎H25国交告第771第3号など
令第137条の2第1号ロ(3)
▶︎H17国交告第566号第2第3号
あり

③-1(1/2以下、構造一体)

増築部分

基準の分類適用される分類根拠規定緩和
構造計算基準地震時、地震時以外:令第3章第8節令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ロ(2)、ハ(2)
なし
仕様規定令第3章第1節〜第7節の2令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号
なし
その他法第40条に基づく条例の規定(構造耐力に関する規定)令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
構造計算基準令第3章第8節令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ロ(1)、ハ(1)
なし
仕様規定耐久性等関係規定令第137条の2第2号イあり
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号
あり
屋根ふき材など、特定天井・屋根ふき材など
▶︎S46建告第109号など
・特定天井
▶︎H25国交告第771第3号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第3号
あり

③-2(1/2以下、架構の変更なし)

増築部分

基準の分類適用される分類根拠規定緩和
構造計算基準地震時、地震時以外:令第3章第8節令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ロ(2)、ハ(2)
なし
仕様規定令第3章第1節〜第7節の2令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号

なし
その他法第40条に基づく条例の規定(構造耐力に関する規定)令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
構造計算基準地震時:耐震診断・改修または新耐震基準
地震時以外:令第3章第8節
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ロ(1)、ハ(1)
あり
仕様規定耐久性等関係規定令第137条の2第2号イあり
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号
あり
屋根ふき材など、特定天井・屋根ふき材など
▶︎S46建告第109号など
・特定天井
▶︎H25国交告第771第3号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第3号
あり

③-3(1/2以下、法第20条第1項第4号木造建築物)

増築部分

基準の分類適用される分類根拠規定緩和
構造計算基準
仕様規定令第3章(第8節除く)令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号

なし
その他法第40条に基づく条例の規定(構造耐力に関する規定)令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
構造計算基準(壁量計算など)令第42条、令第43条、令第46条第1項〜第4項
※枠組壁工法・木質プレハブ工法はH13国交告第1540号第1〜第10
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ロ(2)、ハ(2)
あり
仕様規定耐久性等関係規定令第137条の2第2号イあり
建築設備・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号
あり
屋根ふき材など、特定天井・屋根ふき材など
▶︎S46建告第109号など
・特定天井
▶︎H25国交告第771第3号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第3号
あり

③-4(1/2以下、法第20条第1項第4号の基礎補強)

増築部分・既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項
構造計算基準
仕様規定令第3章第1節〜第7節の2
(令第36条、令第38条第2項〜第4項は除く)
令第137条の2第2号ロあり
基礎H17国交告第566号第4令第137条の2第2号ロ
▶︎H17国交告第566号第4
あり

④(1/2以下、EXPJ増築)

増築部分

基準の分類適用される分類根拠規定緩和
構造計算基準地震時、地震時以外:令第3章第8節令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ロ(2)、ハ(2)
なし
仕様規定令第3章第1節〜第7節の2令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号

なし
その他法第40条に基づく条例の規定(構造耐力に関する規定)令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号イ
なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
構造計算基準地震時:耐震診断・改修または新耐震基準
地震時以外:令第3章第8節
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第1号ハ、ニ
あり
仕様規定耐久性等関係規定令第137条の2第2号イあり
建築設備・屋上の水槽など
▶︎令第129条の2の3第3号
(法第20条第1項第1号〜第3号の建築物)
・給排水などの配管設備
▶︎令第129条の2の4第2号、第3号
・昇降機など
▶︎令第129条の4、令第129条の5、令第129条の8第1項、令第129条の12第1項第6号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第2号
あり
屋根ふき材など、特定天井・屋根ふき材など
▶︎S46建告第109号など
・特定天井
▶︎H25国交告第771第3号など
令第137条の2第2号イ
▶︎H17国交告第566号第3第3号
あり

⑤(1/20かつ50m2以下)

増築部分

基準の
分類
適用される基準根拠条項緩和
全ての構造規定令第3章
令第129条の2の3
法40条に基づく条例の構造規定
令第137条の2第3号イ(1)なし

既存部分

基準の分類適用される基準根拠条項緩和
全ての構造規定危険性が増大しないこと令第137条の2第3号イ(2)あり

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