既存不適格建築物とは
「既存不適格建築物」を正しく理解できるようになりましょう。正しく理解している人は少ないように思います。
「既存不適格建築物」とは
「既存不適格建築物」とは
既存不適格の建築物
「既存不適格」とは
「既存不適格」とは
既に建っていて(既存)現在の建築基準法に適合しない(不適格)こと
既存不適格は、建築基準法にかかわらず他の法令においても用いられる法律用語です。
【注意事項】建築基準法で「既存不適格」とか「既存不適格建築物」という用語が出てくるわけではありません。
既存不適格建築物が存在する理由
既存不適格建築物が存在する理由は、おおきく2つあります。
- 建築基準法の改正
- 都市計画などの変更
❶ 建築基準法の改正
建築基準法は毎年のように改正されますが、基準が厳しくなると、既に建っている建築物(=既存建築物)は、建てた当時の基準には適合していても改正され厳しくなった基準に適合しなくなってしまうことがあります。
❷ 都市計画などの変更
従前、建築基準法が改正されなくても、都市計画で準防火地域だった敷地が防火地域に変更され変更後の防火地域内の建築物の制限(法61条など)に適合いなくなることもあります。
既存不適格と違反は違う
既存不適格(既存不適格建築物)は違反(違反建築物)かということそうではありません。建築基準法の中で既存建築物に改正された基準を適用しないよう定めた規定があるためです。
既存不適格建築物 ≠ 違反建築物
根拠規定で確認
根拠規定は法第3条第2項です。(法3条1項には国宝などそもそも建築基準法が適用されない建築物が規定されています。)
(適用の除外)第3条
第1項 省略
第2項 この法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の施行又は適用の際現に存する建築物若しくはその敷地又は現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地がこれらの規定に適合せず、又はこれらの規定に適合しない部分を有する場合においては、当該建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、当該規定は、適用しない。
第3項 省略
規定の解説
簡単にまとめると
建築基準法令の改正の際に既に存在する建築物などが建築基準法令の規定に適合しない場合においては、その建築物などやその部分に対しては、(現行の)建築基準法令の規定は適用しない。
建築物など ▶︎ 建築物、その敷地
例えば…
構造耐力関係規定のひとつである構造計算基準(耐震基準)はS56.6.1に大改正があり規定が厳しくなりました。(この改正以前の耐震基準を旧耐震、改正以降の基準を新耐震と呼びます。)
この改正により、S56.6.1以前に既に建っている旧耐震基準で設計された既存の建築物の多くは新耐震基準に適合しなくなってしまいます。(なかには適合するものもあるかもしれませんが…。)
この新耐震基準に適合していない既存建築物は、原則、建築時の規定(旧耐震基準)に適合していれば、現行の規定(新耐震基準)は適用されません。
既存の建築物 ≠ 既存不適格建築物
既存の建築物の全てが既存不適格建築物ではありません。
建築したばかりの建築物(建築以降に法改正等がされていない)や法改正されても改正後の規定に適合している建築物は既存不適格建築物ではありません。
既存不適格が認められない場合
既存不適格(法3条2項)が認められないケースもあります。
「認められない」ということは、「現行の規定が遡及適用される」ということであり、現行の規定に適合するように改修などしなければなりません。
根拠規定で確認
根拠規定は法第3条第3項です。
この第3項に該当する場合は上述の第2項が適用できません。
(適用の除外)第3条
第1項、第2項 省略
第3項 前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する建築物、建築物の敷地又は建築物若しくはその敷地の部分に対しては、適用しない。
第1号 省略
第2号 省略
第3号 省略
第4号 省略
第5号 省略
1〜5号に該当すると既存不適格が認められません。
既存不適格が認められないケース
既存不適格が認められない1〜5号を要約すると、
- 1号 法改正前の基準に違反している建築物・その敷地
- 2号 都市計画の変更などの場合に、変更後の制限に相当する従前の制限に違反している建築物・その敷地
- 3号 法改正後に増築等を行った建築物・その敷地
- 4号 法改正後に増築等を行なった建築物・その敷地の部分
- 5号 既存不適格建築物だったが現行の規定に適合することになった建築物・その敷地、建築物・その敷地の部分
既存不適格が認められないと…
既存不適格が認めれなと現行の規定が遡及適用されますが、その現行の規定に適合しないと違反建築物になってしまいます。

