都市計画区域等内で増築を含む建築行為をする際は、原則、確認申請が必要です。
ただし、法6条2項により防火地域・準防火地域以外の地域での10m2以内の増築(改築・移転)は確認申請が不要となります。
ただ実際は、単に10m2以内の増築といっても、法文自体に曖昧な部分があり、いろいろなケースを考えると迷うことがあります。
今回は、わかりやすくするために具体的なケースで確認申請の要否を考えていきます。
【1】まずは基本をおさえる
具体的なケースを考える前に、まずは基本的な事項をおさえましょう。すでにわかっている場合は読み飛ばしてください。
原則、「都市計画区域等」内で建築をする際は、建築申請が必要です。(法6条1項)
ただし、「都市計画区域等」内の建築でも、例外的に確認申請が不要となるケースがあり、それが、防火地域・準防火地域外の床面積10m2以内の増築・改築・移転です。(法6条2項)
建築確認が不要になれば、必然的に、完了検査(法7条)、中間検査(法7条の2)も不要となります。
「都市計画区域等」を含む法6条の全般の詳しい解説については下記の解説をお読みください。また、建築申請memoや目からウロコの確認申請も参考になります。
法文でも確認しておきましょう。
建築基準法6条2項
前項(←法6条1項)の規定は、防火地域及び準防火地域外において建築物を増築し、改築し、又は移転しようとする場合で、その増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10m2以内であるときについては、適用しない。
繰り返しになりますが要約すると…「法6条1項(法6条2項中では「前項」)で確認申請が必要となる場合でも、法6条2項で定められる防火地域・準防火地域外での10m2以内の増築・改築・移転は法6条1項が適用されず確認申請が不要」ということです。
防火上の制限の少ない地域での、防火上の制限の少ない建築物の一部の建築行為についての手続き規定の簡略化ということで設けられた規定だと思われます。
【2】どんな時に確認申請が不要になるか
「防火地域(準防火地域)以外の地域で床面積10m2以内の増築は確認申請が不要」ということではあるものの、条文に曖昧な部分があり、色々なケースを考えていくと意外に迷います。どういった点が迷いやすいのか。迷いやすい点を整理して、具体的な事例で考えていきます。
- 増築は、棟増築か ? 敷地内増築か ?
- 10m2は敷地単位か ? 棟単位か ?
- 複数棟の増築する場合は10m2は合計か ? それぞれか ?
- 敷地(建築物)が防火地域または準防火地域と防火地域・準防火地域以外の地域をまたがるときはどうなる ?
「棟増築」「敷地内増築」について聞きなれない方はコチラ(わかりやすく解説しています。)
【2-1】ケース1(敷地内増築、棟増築)
まずは、基本的なケースです。
- 敷地単位でみると増築(敷地内増築)
- 棟単位でみても増築(意匠上1棟の増築)
- 都市計画区域等内の防火地域(準防火地域)以外の地域
この場合は、確認申請不要です。
敷地単位でも棟単位でも増築になるため迷うことはないのではと思います。

【2-2】ケース2(敷地増築、棟新築)
こちらもケース1と同様基本的なケースです。
- 敷地単位でみると増築(敷地内増築)
- 棟単位でみると新築(意匠上別棟の増築)
- 都市計画区域等内の防火地域(準防火地域)以外の地域
この場合は、確認申請不要です。
棟単位で考えると新築なので少し迷うかもしれません。しかし、現実的には、このケースは確認申請不要と扱っていると思われます。(実際に計画する場合は事前に設置場所の特定行政庁に確認しましょう。)

【2-3】ケース3(複数棟の増築)
ここから少し応用です。
- 複数棟の増築で棟単位では10m2以内だけど合計すると10m2超になる。
- 都市計画区域等内の防火地域(準防火地域)以外の地域
この場合は、おそらく確認申請必要です。(実際に計画する場合は事前に設置場所の特定行政庁に確認しましょう。)
もし仮に、このケースで確認申請が必要と判断された場合に、この増築を1棟ずつ別々に工事をして10m2以下の増築を繰り返した場合はどうなるのかといったことも考えられます。そうした場合は、確認申請不要となると思われますが、計画によっては脱法行為とみなされる可能性もあり話がグレーな方向にはいっていってしまうため、この話はここまでにしておきます。

愛知県がHPで公開している建築基準法の取扱い(愛知県建築基準関係例規集)では、「防火地域及び準防火地域外において増築、改築又は移転に係る部分の床面積の合計が10m2以内の扱いは敷地単位とする。(新築の場合はすべて確認申請対象となる。)」という記載があります。
よって、このケースでは敷地単位では10m2超のため、確認申請が必要となると思われます。
【2-4】ケース4(地域がまたがる)
結論からいいますと、敷地が防火地域または準防火地域 と 防火地域・準防火地域以外の地域にまたがっている場合は、設置場所の特定行政庁に確認してください。
法文上、明確に定められていないと思いますし、逐条解説を含め書籍などでも明確に解説されているものもみつけらませんでしたm(_ _)m
ポイントとしては「法91条をどう読むか」だと思います。
法91条を適用し、敷地の過半が「防火地域または準防火地域」の場合は確認申請が必要で、敷地の過半が「防火地域・準防火地域以外の地域」の場合は確認申請が不要とするのが一般的な判断ではないかと思われます。ただ、法91条中にカッコ書きで「防火地域及び準防火地域を除く」という文があり、これが法6条2項の規定にも適用されるかどうかという疑義があり、法6条2項にも適用されると、法65条を適用することになると考えられますが、そうなった場合には扱いが変わってくるケースも出てくることが想定さます。

【3】確認申請不要な増築の注意点
確認申請が不要となるケースにおいてもその建築物や敷地に対しては建築基準法の規定が適用されます。あくまでも確認申請が不要となるだけです。勘違いされやすいポイントなのでご注意ください。
例えば、戸建て住宅の庭に10m2以内の物置を設置したといったケースを考えます。
物置自体の基礎など構造方法や建築敷地として適用される容積率・建蔽率などの集団規定といった規定に適合している必要がありますので、実際に設置される場合には、確認申請が不要であっても建築士に依頼して設置するのが望ましいと思います。
【4】 まとめ
- 増築は、原則、棟単位ではなく敷地単位で増築になるかどうか。
- 10m2は、原則、ひとつの工事の単位。ひとつの敷地で複数棟の増築がある場合はその合計。
- 実際に設置する場合は、念のため設置場所の特定行政庁に確認しましょう。
- 確認申請が不要であっても増築する建築物とその敷地に対して建築基準法の規定は適用されるので注意しましょう。
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