【2】単体規定

【”今さら聞けない”基本編】「有効採光面積」の求め方の(令20条)

有効採光面積、採光補正係数、採光関係比率、D/H
マツリ

居室の採光に関する規定は、法28条1項法35条法35条の3の3つの規定がります。どの規定においても採光上有効な開口部の面積(=有効採光面積)を求める必要があります。

本解説では、“今さら人には聞けない”有効採光面積の求め方の基本を解説します。

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【"今さら聞けない"基本編】採光関係比率(令20条) マツリ 本解説では、有効採光面積(採光補正係数)を計算する上で必要となる採光関係比率についての①基本的な考え方と②基本的な事例を知るこ...

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採光に関する規定

居室の採光に関する規定は、建築基準法では法28条1項法35条法35条の3の3つあります。どの規定においても採光上有効な開口部の面積(=有効採光面積)を求め、この計算で求めた有効採光面積が、居室の面積に各規定で定められた割合をかけた数値(=必要採光面積)以上であることを確認します。

必要採光面積(㎡)≦ 有効採光面積(㎡)

(必要採光面積(㎡) = 居室の面積(㎡) × 各規定で定めらた割合)

本解説では、このうちの有効採光面積の求め方基本を解説します。

採光上の有効な開口部の面積に似たような規定で換気上の有効な開口部の面積排煙上の有効な開口部の面積を求めるものもあるのでご注意ください。

有効採光面積の求め方

有効採光面積は、開口部の面積用途地域・開口部の位置に応じて求められる補正係数(=採光補正係数)を乗じて求めます。単純な開口部の面積ではありません。(法28条1項→令20条1項、2項)

有効採光面積(㎡) = 採光補正係数 × 開口部面積(㎡)

式で表すと単純な式ですが、採光補正係数については用途地域と開口部の位置の2つの要素により求められる数値で少し複雑です。ここでは3つのstepに分けて解説していきます

  • ★ 有効採光面積の求め方のstep
  • 【step1】 開口部の面積を求める
  • 【step2】 採光補正係数を求める
  • 【step3】 有効採光面積を求める

【step1】開口部の面積を求める

単純な開口部の面積を求めます。例えば縦1m、横2mの窓の場合は2㎡です。

有効採光面積、採光補正係数、採光関係比率、開口部面積

【step2】採光補正係数を求める

採光補正係数は、以下の式で求められます。係数なので単位はありません。(令20条2項)

採光補正係数 = 採光関係比率 × α ー β

  • ※1:採光補正係数が3.0を超えるときは、3.0を限度とする。
  • ※2:道(道路)に面する場合で算定値が1未満の場合は1とする。
  • ※3:道(道路)に面しない場合で水平距離7m以上で算定値が1未満お場合は1とする。(工業系の用途地域は5m、商業系の用途地域・指定のない区域は4m)
  • ※4:※2、3以外で算定値が負数の場合は0とする。

式中の採光関係比率は開口部の位置により求められる値です。αとβは用途地域により変わる値です。

step2-1「開口部の位置」により影響を受ける係数(採光関係比率)

採光関係比率 = D(m) /H(m) ※最も小さい数値

  • D開口部の直上にある建築物の各部分 から 開口部に面する隣地境界線等の対向部 までの水平距離(m)
  • H開口部の直上にある建築物の各部分 から 開口部の中心 までの垂直距離(m)
  • 隣地境界線等:①隣地境界線、②同一敷地内の他の建築物、③当該建築物の他の部分

採光関係比率は、大きい方が採光補正係数が大きくなります。

有効採光面積、採光補正係数、採光関係比率、開口部面積
隣地境界線について(緩和規定)

Dが隣地境界線までの距離の場合で、その隣地境界線が道、公園・広場等に面する場合、別の線を隣地境界線をみなす特別な取り扱いがあります。(令20条2項1号)

この取り扱い(緩和規定)では、通常の隣地境界線よりDを長くとることができるので、計算上有利になります。

  • に面する場合
  • ▶︎ 「道の反対側の境界線を隣地境界線とみなす。
  • 公園、広場、川その他これらに類する空地または水面に面する場合
  • ▶︎ 「公園、広場、川その他これらに類する空地または水面の幅の1/2だけ隣地境界線の外側にある線を隣地境界線とみなす。
有効採光面積、採光補正係数、採光関係比率、公園、広場、川、空地、水面

step2-2「用途地域」により影響を受ける係数(α、β)

用途地域αβ採光補正係数
(D/H × α − β)
住居系の用途地域61.4D/H × 6 − 1.4
工業系の用途地域81D/H × 8 − 1
商業系の用途地域
用途指定のない区域
101D/H × 10 − 1

採光関係比率が同じとした場合、採光補正係数は住居系が最も小さく、商業系が大きな値となります。よって、住居系が最も制限が厳しいと言えます。

【step3】有効採光面積を求める

さいごに、step1で求めた開口部の面積step2で求めた採光補正係数を乗じて有効採光面積を求めます。

有効採光面積(㎡) = 採光補正係数 × 開口部面積(㎡)

用途地域別に表にまとめると以下のようになります。

用途地域有効採光面積(㎡)
住居系の用途地域(D/H×6−1.4)×開口部の面積(㎡)
工業系の用途地域(D/H×8−1)×開口部の面積(㎡)
商業系の用途地域
用途指定のない区域
(D/H×10−1)×開口部の面積(㎡)
用途地域別の別の有効採光面積の求め方

なお、ひとつの居室に開口部が複数ある場合は、それぞれの有効採光面積を足し合わせた値とすることができます。

居室Aに開口部1、開口部2がある場合

居室Aの有効採光面積 = 開口部1の有効採光面積 + 開口部2の有効採光面積

特殊な取扱い

天窓は「3倍」(令20条1項本文カッコ書①)

天窓は、計算した数値(D/H×αーβ)を3倍することができます。ただし、3倍した数値が3を超える場合は3としなければなりません。

採光、採光補正係数、採光関係比率、D/H、天窓

縁側は「0.7倍」(令20条1項本文カッコ書②)

90cm以上の縁側(ぬれ縁)を設けた開口部は0.7倍しなければなりません。0.7倍した数値が3を超える場合は3とします。

採光、採光補正係数、採光関係比率、D/H、縁側、ぬれ縁

その他の特殊な取扱い

上記は採光補正係数の算定における基本です。ただ、これだけでは実際の建築物の設計に対応できません。国や特定行政庁などが取扱いを示しています。(ここでは割愛します)

まとめ

  • ① 採光に関する規定は「必要採光面積 有効採光面積」を確認する。
  • 有効採光面積 =(D/H×α−β)×開口部の面積
  • ▶︎ D/H:採光関係比率といい、開口部の位置よりきまる数値
  • ▶︎ α、β:用途地域によって変わる数値
  • 有効開口面積は採光上有効な開口部の面積で単純な開口部の面積ではない。 
  • ③ 隣地境界線が公園・広場などに面する場合は緩和あり。
  • ④ 縁側・天窓は特別な扱いがあるので注意。

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