用語の定義
法第2条第14号、第15号に定義が規定されています。
(用語の定義)第2条
第14号 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。
第15号 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。
難しい条文ではないのですが、ざっくりとした内容実務においては判断が難しいケースがあります。
「大規模」とは
修繕・模様替が「大規模かどうか」は、法文上「主要構造部の過半」と規定されています。ただ、その「主要構造部の過半」をどう判定するかは、明確に定義づけされていません。「逐条解説 建築基準法」で少し詳しく解説されています。
大規模の修繕 本号(=大規模の修繕)に該当するか否かの判定は、1棟の建築物全体の主要構造部の種類区分ごとに行う。例えば、柱と壁の2種にわたる修繕が行われても、いずれについても過半にあ至らない場合は「大規模の修繕」該当しない。…
大規模の模様替え 大規模かの判定は、前号(=大規模の修繕)と同様の方法による。…
逐条解説 建築基準法
「過半の判断は主要構造部ごとにする」と書かれているもののそれ以上の解説はありません。
そして、「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」では、各主要構造部の過半の判断について例示されています。
- 柱:総本数に占める割合
- 壁:総面積に占める割合
- 床・屋根:投影面積に占める割合
- 階段:階ごとの総数に占める割合
「修繕」「模様替」とは
修繕と模様替についても「逐条解説 建築基準法」に解説があります。
大規模の修繕 …。なお、「修繕」とは、既存の建築物の部分に対して、おおむね同様お形状、寸法、材料により行われる工事をいう。
大規模の模様替 …。なお、「模様替」とは、おおむね同様の形状、寸法によるが材料、構造種別等は異なるような既存の建築物の部分に対する工事をいう。例えば、木造の柱を鉄骨造の柱とし、土塗り壁をコンクリートブロック造の壁とし、藁葺き屋根を亜鉛鉄板葺きの屋根とする棟の工事は模様替に該当する。
逐条解説 建築基準法
修繕と模様替は異なります。また、日常で使用される「修繕」「模様替」は、建築基準法の「修繕」「模様替」と違った意味で使われることが多いので注意が必要です。
「大規模の修繕・模様替」は「建築」ではない?
「建築」は「新築」「増築」「改築」「移転」の4つです。よって、「大規模の修繕・模様替」は「建築」ではありません。
建築確認は必要?
建築物の大規模の修繕・大規模の模様替の工事する前には、建築の工事と同様、原則、建築確認申請を行い、確認済証の交付を受けなければなりません。
法第6条に規定されています。
また、大規模の修繕・大規模の模様替の工事が完了したら、完了検査を検査済証の交付を受けなければなりません。
建築確認が不要の場合もある?
以下の小規模な建築物については、大規模の修繕・模様替をしても建築確認が不要の場合があります。
■ 大規模の修繕・模様替をしても建築確認が不要な建築物
- 法第6条第1項第1号〜3号以外の建築物につていの大規模の修繕・大規模の模様替
既存遡及は?
法86条の7が適用できる
原則、既存の建築物は法3条2項により、現行の建築基準法の適用を受けません。
これは、建築時の基準に適合していれば良いということなのですが、大規模修繕・模様替をするとその建築物は法3条3項3号により現行の建築基準法が遡及されます。(例えば、旧耐震基準で建築されたものを現行の構造計算基準に適合させる)
ただし、すべての基準が遡及適用されると、現実的に大規模修繕・模様替が困難になってしまうケースがあります。そのため、法86条の7で一定の緩和が認められます。
(既存の建築物に対する制限の緩和)
第86条の7 第1項
第3条第2項(…)の規定により第20条、第26条、…又は第68条第1項若しくは第2項の規定の適用を受けない建築物について政令で定める範囲内において増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(…)をする場合(…)においては、第3条第3項(…)の規定にかかわらず、これらの規定は、適用しない。
さらに令137条の12で「政令で定める範囲」が具体的に規定されています。
まとめ
- 定義 「大規模」と、「修繕」「模様替」を正しく理解することが大切。大規模修繕・模様替は建築ではない。
- 確認申請 法6条1項1〜3号以外の建築物は確認申請が不要。
- 既存遡及 法86条の7、令137条の12による。