構造耐力上主要な部分に該当するかどうかはとても重要です。構造耐力上主要な部分に該当するかどうかで構造基準(法20条)の適用が大きく異なります。また、構造耐力上主要な部分と似たような用語に主要構造部という用語がありますが異なる用語ですのでそれぞれを正しく理解することが重要です。
- 構造耐力上主要な部分の条件は2つ
- 構造耐力上主要な部分と主要構造部は違う
条文で確認
令1条三号に定義が規定されています。
一般的には、よく構造耐力上主要な部分は構造部材、構造耐力上主要な部分でない部分は非構造部材といわれます。
構造耐力上主要な部分 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。
条文の構造(2つの条件が必要)
条文の構造をシンプルにすると理解しやすいです。
構造耐力上主要な部分とは、A(建築物の部分)で、B(荷重)を支えるものをいう。
A(建築物の部分)に当てはまるだけではダメです。
B(荷重)を支えるものだけでもダメです。
A(建築物の部分)とB(荷重)の2つに該当しすることで、構造耐力上主要な部分に該当します。
【条件1】A(建築物の部分)は?
A(建築物の部分)は10種類あります。
- 基礎
- 基礎ぐい
- 壁
- 柱
- 小屋組
- 土台
- 斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)
- 床版
- 屋根版
- 横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)
❶から➓のどれかに該当しなければなりません。
【条件2】B(荷重)は?
B(荷重)は5種類あります。(分け方によっては❶、❹、❺は細分化できますが…)
- 建築物の自重・積載荷重
- 積雪荷重
- 風圧
- 土圧・水圧
- 地震その他の震動・衝撃
❶から❺のどれかに該当しなければなりません。
例えば…
条文自体はシンプルで理解しやすと思われますが、実務においては判断が難しいものもあります。
- 建築物の自重を支える柱は構造耐力上主要な部分
- 積載荷重を支える小梁は構造耐力上主要な部分
- 積雪荷重を支える(受ける)鉄板屋根は構造耐力上主要な部分ではありません。
- 風荷重を支える(受ける)庇は構造耐力上主要な部分ではありません。
- 鉄骨の屋外階段は構造耐力上主要な部分ではありません。
❸から❺については、場合によっては構造耐力上主要な部分と判断される場合もあります。建築基準法の適用にあったては、構造耐力上主要な部分とした方が安全側ではあります。
構造耐力上主要な部分と主要構造部の違い
構造耐力上主要な部分と主要構造部は似ているようで違います。
構造耐力上主要な部分は用語から明らかですが、構造耐力の観点です。
一方、主要構造部は、防火上の観点です。
例えば
- 柱は、構造耐力上主要な部分であり、主要構造部でもあります。
- 基礎は、造耐力上主要な部分ではありますが、主要構造部ではありません。
- 斜材であるブレースは、構造耐力上主要な部分ではありますが、鉛直力(通常、建築物の自重・積載荷重)を負担しなければ主要構造部ではありません。(※)
(※)「建築物の防火避難規定の解説 2016[本/雑誌] / 日本建築行政会議/編集」による。
防火被覆は構造耐力上主要な部分ではない
少し細かい話です。でも重要な話です。
鉄骨造の耐火建築物の場合、柱(例えば角型鋼管)を耐火構造のとするするためには柱に耐火被覆(例えば吹付ロックウール)をする必要があります。この場合、耐火被覆を含めた柱(部位)が主要構造部です。一方、構造耐力上主要な部分については、角型鋼管(ボルトや溶接部を含む)が構造耐力上主要な部分で、耐火被覆は柱の一部ではありますが、荷重を支えるものではなく構造耐力上主要な部分ではありません。
- 主要構造部 ▶︎ 部位として定義している
- 構造耐力上主要な部分 ▶︎ 部材として定義している
※ 詳しくは逐条解説建築基準法(逐条解説建築基準法編集委員会/編著)や建築構造審査・検査要領 実務編 審査マニュアル 2018年版(日本行政会議/編集)といった書籍が参考になります。
まとめ
- 構造耐力上主要な部分は建築物の部分と支える荷重の2つが揃って、構造耐力上主要な部分になる
- 構造耐力上主要な部分は構造耐力の観点、主要構造部は防火上の観点の規定をするために定義されている。