主要構造部に該当するかどうかはとても重要です。
主要構造部に該当するかどうかで防火避難に関する規定の適用が大きく異なります。
また、主要構造部と似たような用語に構造耐力上主要な部分という用語がありますが異なる用語ですのでそれぞれを正しく理解することが重要です。
- 条文の正しい読解が基本(特に除外規定は注意)
- 主要構造部の「構造」は構造耐力の「構造」ではない。
条文の読解
法2条五号で定義されています。
五 主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。
条文の構造
条文の構造を正しく理解しましょう。
(原則)Aをいい、(Aの部分であっても)構造上重要でないBは除く。
主要構造部は5種だけ
主要構造部は以下の5種の部分をいいます。
- 壁
- 柱
- はり
- 屋根
- 階段
ちょっとだけ注意が必要です。
上記の5種以外の部分は、構造上重要であっても主要構造部にはなりません。
除外規定があります
そして、上記の5種の部分であっても構造上重要でない以下の部分(その他これらに類する建築物の部分を含めて11種)は除かれます。
- 間仕切壁
- 間柱
- 付け柱
- 揚げ床
- 最下階の床
- 回り舞台の床
- 小ばり
- ひさし
- 局部的な小階段
- 屋外階段
- その他これらに類する建築物の部分
除外規定を正しく読めていますか?
除外規定の部分は、条文の読み方のルールを知らないと正しく読むことができません。間違って読解されていることが多くあるように思います。
「構造上重要でない」は上記の11種の部分全てにかかります。
「局部的な」は小階段にだけかかります。(屋外階段にはかかりません。)
図で表すと以下のようになります。
以下のように読み違えることが多いと思います。接続詞が何と何を繋いでいるのかを正しく理解しましょう。
法律の読み方にはルールがあります。法律の基礎からしっかり勉強したい方には下記の本がオススメです。
計画によって判断が分かれる場合もあるので注意
除外規定の条文を正しく読解することは大切ですが、実務的には多種多様な建築計画ごとに建築士・建築主事等が判断していかなければならないのが現実です…。
その際には参考書などを頼りに判断する必要があります。下記は一例です。
…
なお、「建築物の構造上重要でない」は明確な定義はされていないが、例えば、次のような避難等のために重要な部分は主要構造部に該当するものと考えられる。
- 孫ばりと呼ばれるような局部的な荷重のみを受け持つ小ばりを除き、大ばりと同様又は大ばりよりも大きな長期荷重を支える小梁。
- 屋外階段のうち、2方向避難のために必要な階段や最上階から地上まで結ばれている階段。
…
建築構造審査・検査要領 実務編 審査マニュアル 2018年版(編集:日本建築行政会議)
主要構造部の構造は構造耐力の構造ではない
主要構造部の用語中の「構造」は構造耐力(法20条関係)の「構造」とは違います。主要構造部の構造は一般構造(令2章)の「構造」で、特に防火上の観点からの構造です。
これは、法律に具体的に規定されているものではありません。多くの参考書に記載があります。逐条解説 建築基準法には以下のように解説されています。
本法では建築物の主用部位に対して、倒壊の防止、延焼、火災拡大の防止等を目的とする防火上の制限を加える場合が多いので、これらの主要部位を一括して「主要構造部」と定義している。したがって、外壁及び間仕切壁については、防火上の観点から、構造耐力上重要でないものも主要構造部とされている。
…
なお、本法においては、「構造部材」を構造強度上等の観点から規制するうえで、「構造耐力上主要な部分」という定義(令第1条第3号)を用いている。
逐条解説 建築基準法(編著:逐条解説建築基準法編集委員会)
まとめ
- 主要構造部は5種の建築物の部分(壁、柱、はり、屋根、階段)
- 5種の部分でも構造重要でないものは除かれる。
- 主要構造部の「構造」は一般構造(特に防火上の観点)の「構造」で、構造耐力の「構造」ではない。