【5】用語の定義

【わかりやすく解説】物置は建築物か?(建築基準法2条一号)

物置は建築物か?

ホームセンターで売っている物置は建築物ですか。

原則、建築物です。

建築物になると確認申請が必要になるということですか。

原則、建築前に確認申請、建築後には完了検査が必要です。

わかりました。ちゃんと手続きをすればいいのですね。

手続きすればいいだけはありません。構造なども建築基準法に適合するものでなければなりません。詳しく解説していきます。

小規模な倉庫(物置なども含む)は建築物ではありません

関連条文:法2条、法20条、法37条など

建築物にならないものであれば、確認申請不要ですし、構造などのいわゆる実体規定についても建築基準法の制限を受けることはありません。建築物になる・ならないは国土交通省や特手行政庁で基準を出しています。

逆に建築物に該当する場合は原則、確認申請が必要です。大きさや設置場所などにより不要となる場合もあります。

国土交通省の技術的助言

「小規模な倉庫の建築基準法上の取扱いについて(技術的助言)」(平成27年2月27日国住指第 4544 号)で小規模であれば建築物に該当しないとされています。(下記リンク参照ください)

https://www.mlit.go.jp/common/001093081.pdf

土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含む。)のうち、外部から荷物の出し入れを行うことができ、かつ、内部に人が立ち入らないものについては、建築基準法第2条第1号に規定する貯蔵槽に類する施設として、建築物に該当しないものとする。したがって、建築確認等の手続きについても不要である。

上記は技術的助言の抜粋です。水色マーカーに当てはまるものは建築物に該当しません。

簡単に言うと、タンスのような使い方をするものについては家具であって建築物ではないという見解です。ただ、明確に寸法などが決められておらずあいまいな表現です…。

基準総則集団規定の適用事例2017年度版(編集:日本建築行政会議)のP27「小規模な倉庫」で一定の基準が示されています。

・土地に自立して設置する小規模な倉庫(物置等を含む。)のうち、奥行きが1m以内のもの又は高さが1.4m以下のものは、建築物に該当しない。

※日本建築行政会議とは特定行政庁などで組織された団体です。日本建築行政会議が編集しているものなので全国的に統一された基準が示されています。

各特定行政庁の基準

国土交通省の技術的助言をもとに、多くの特定行政庁で基準を決めています。例えば横浜市は「横浜市建築基準法取扱基準集」で基準を定めています。

1 「小規模」の取扱い

「小規模な倉庫」の「小規模」とは、「奥行が1m以下かつ高さが 2.3m以下で、床面積が2㎡以内」とします。

2 配慮事項

本取扱いにより建築物として取り扱わない小規模な倉庫の設置にあたっては、周囲の市街地環境への影響に留意し、次の①~④の内容について配慮をお願いします。

①建築基準法第 42 条に規定する道路内への設置を避けること。

②市街化調整区域内の建築物の建築が認められない一団の土地において複数の設置を避けること。

③倉庫(建築物)に関する建築基準法第 48 条の制限に適合しない用途地域での設置を避けること。

④危険物の収納を避けること。

3 その他注意事項

高さが 1.4m以下の倉庫であっても、奥行又は床面積が上記の数値を超える場合には建築基準法上の建築物として取り扱うのでご注意ください。

各特定行政庁で若干基準が異なります。同じものでも設置場所によっては建築物になる、ならないが変わってきます…。

過去は…

国交省から技術的助言が出される平成27年2月以前から人が中に入れるようなものは建築物に該当するということを取扱集などで明記している特定行政庁もあったと思います。

ただ、コンプライアンスがそこまで厳しく言われていなかった時には、ホームセンターで購入した物置を確認申請を出さずに家の庭に設置するということは多々ありました。

建築主には悪意がないことが多いと思いますが、業者側は建築物に該当すると認識してたと思われます。数は減っていると思いますが今でもあるのかもしれません…。

建築物に該当する物置の問題点

確認申請等の手続きをすればいいか言うと、それだけでは問題は解決しません…。

建築基準法で定められている材料に関する基準(法37条)構造耐力に関する規定(法20条→令38条、令第3章5節など)などの実体規定に適合する必要があります。

もちろん、建築場所によっては容積率、建蔽率、高さ制限などの集団規定にも適合させる必要もあります。

ここでは、特に法20条の構造耐力規定について少し詳しく解説します。小規模なものなので原則構造計算までは求められません。」

基礎(令38条)

コンクリートブロックを地面に置きその上に既成品の物置を設置してあるケースをよく見ます。

原則、基礎は令38条に適合するのも出なければなりません。必要に応じて構造計算で安全を確かめなければなりません。

鉄骨造(令第3章第5節)

既成品の物置自体について、鋼製であれば原則令第3章第5節(鉄骨造)の規定を満足する必要があります。鉄骨造の規定については原則、柱梁で構造が構成されるものを前提として規定されていますが、既製品の物置は柱梁がなく外壁自体を構造体とし、その外壁の面を組み合わせて強度をだすといったようなものが多いと思います。そもそもの設計コンセプトが建築基準法の鉄骨造の規定にマッチしていません。薄板軽量型構造といわれる特殊な構造方法のものありますが、鋼製物置はそれでもありません。

個別の認定を受ける?

上述のように設計コンセプト自体が建築基準法にそぐわないものを建築できなかいうと、そうではなく、建築基準法ではそういったものに対しても同等の安全が確認できるものであれば建築できる道筋が用意されています。いわゆる型式認定や38条認定と言われるものです。(そいったものがなければ建築技術が進歩しません。)国土交通大臣の認定を受けること一部の規定が免除されます。

ただ、既製品の物置については、こういった認定を受けているものは見たことがありません。

丈夫だからいいOKではない

鋼製物置を製造しているメーカーとしても実験などをして丈夫なものになるよう企業努力はしていると思います。また、製品としてJISの認証を受けている製品もあります。

ただ、建築物として建築基準法が適用されてしまうと、ただ丈夫だからいいということではなくなってしまいます。建築基準法の規定に則った丈夫(安全)なものでなければなりません。残念ながらJIS認証商品であってもそれは変わりません。

現在のコンプラインが求めらる社会では、「人に危害を加えるものでもないし自己責任で設置します。」ということは許されなくなってなってきています。

ある意味で生きづらい世の中なもかもしれません…。

私が参考にしている本

私がいつも参考にしている本です。表や図が多くわかりやすい内容ですが建築基準法に不慣れな方にとってはまだまだ専門用語が多く理解に苦しむ方も多いと思います。もちろん私もその一人です。本サイトがそういった方に建築基準法やこれらの参考書との架け橋としての役割を担っていけば幸いです(*ᴗˬᴗ)⁾⁾ペコ


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