令和4年(2022年)6月17日に改正建築基準法が公布されました。
施行については現時点(R4年6月時点)で、未定です。
主な改正内容
ほぼ木造建築物についての改正です。
日本社会の流れとしてSDGsが推進されており建築物についてもサスティナブルな木材の活用が求められています。
建築基準法が木造建築物の推進の足かせにならないようにということで、木造建築物の建築に対して柔軟に対応できるようにするための改正のようです。
最近は、同様の理由で木造建築物に対する規制の合理化(緩和)がメインに建築基準法の改正が進められています。今回の改正もその一環だと思われます。
- 【強化】木造建築物の建築確認の対象範囲拡大(法6条)
- 【強化】木造建築物の4号特例の対象規模縮小(法6条の4関係)
- 【強化・緩和】木造建築物の構造計算対象規模の拡大・縮小(法20条、建築士法3条関係)
- 【緩和】構造適判の特例の拡大(法6条の3関係)
- 【緩和】木造建築物などの防火規定の合理化
今回の解説では①~④について解説します。
⑤については現時点では政令が改正されておらず詳細が不明な部分が多いため、現時点(R4年6月時点)の解説は省略させていただきます。)
具体的な改正案などは下記の国土交通省のHPで確認ください。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/jutakukentiku_house_tk_000163.html
①建築確認の対象範囲拡大
あまり認識されていない方も多いかもしれませんが、法6条1項各号のいずれにも該当しない建築物も存在します。
このような法6条1項の各号のいずれにも該当しない建築物は建築確認が不要です。(付随する中間検査、完了検査、構造適判、省エネ適判の手続きもです。)
今回の改正では、法6条1項中の各号が改正され、もともと建築確認が不要だった建築物の建築確認が必要となります。(すべての建築物の建築確認が必要なるわけではありません。)
都市計画区域などの区域外の木造が変更
木造の建築物についての改正で、非木造(鉄骨造、RC造など)については変わりません。
木造2階建て建築物について、都市計画区域外でも建築確認が必須になった。
木造平屋の建築物について、都市計画区域外でも延床200㎡超で建築確認が必須になった。
建築物の高さ、軒高さによる制限がなくなった。
改正前は、都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区外などでは以下の建築物は建築確認が不要でした。
図
改正後は、都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区外などでは以下の建築物は建築確認が不要になります。木造・非木造の分けがなくなり、非木造の規模に合わせる形で建築確認が不要な木造が範囲が縮小されます。
図
例えば、改正前は都市計画区域、準都市計画区域、準景観地区外などの木造2階建ての戸建て住宅(高さ13m以下、軒高さ9m以下)は建築確認が不要でしたが、改正後は、建築確認が必要になります。
6条区分の改正内容の確認
法6条1項(各号)の改正内容についてです。1項本文の内容については各号の改正に併せて一部改正されていますが、基本的には変わっていないと考えられます。
- 旧二号(木造)と旧三号(非木造)が一緒になり新二号になりました。
- 旧二号と旧三号が新二号として一緒になった際に、新二号(旧三号)に該当する木造の範囲が拡大しました。
- また、新三号(旧四号)に該当する木造、法6条1項各号に該当する以外の木造の範囲が縮小しました。
もともと一号は用途によって、二号・三号は構造によって、四号は地域によって区分けされており構造に関する区分(二号・三号)のうち二号は木造、三号は非木造でした。今回の改正では二号と三号が新二号として一緒になり、結果、シンプルになりました。
②4号特例の対象規模縮小
改正の背景(簡単に)
木造の2階建て戸建住宅が4号特例(小規模建築物の確認の特例)の対象外になりました…。
特例対象の建築物については、建築確認(完了検査)の審査(検査)の省略を逆手にとり悪質な業者により建築された建築基準法に適合しない建築物が社会問題となり、国交省ではこれまでも規制強化についての検討がされていたようです。これまではさまざまな問題もあり法改正までは至っていませんでした。
今回、ようやく改正されました。社会問題になってもなかなか改善が進んでいないようで、個人的には消費者保護の観点からも4号特例の規制強化については賛成です。
詳しくは以下で解説しています。
改正内容は
4号特例とは、法6条1項四号に該当する建築物(小規模な建築物)については、建築確認(完了検査)の際に一部の規定の審査(検査)が省略されるという制度です。例えば法20条(構造耐力関係規定)の審査が省略されます。
法6条の4三号(令10条三・四号)に規定されています。
今回の改正で、4号特例のすべて廃止される訳ではありません。
新法6条区分の新三号区分であれば引き続き確認特例の適用を受けることができます。
旧四号が新三号に移行した際に、非木造の規模に併せる形で木造の対象範囲が縮小されました。
階数1、延床面積200m2以下の木造建築物は確認特例の適用を受けることができます。
2階建ての木造が特例を適用できなくなりました。
余談ですが、一般的に4号特例と言われていましたが、改正後は3号特例というのでしょうか❓
また、4号特例以外にも大手のハウスメーカーの住宅(型式適合認定住宅)などにつていも確認の特例(法6条の4一・二号)がありますが今回の改正では型式適合認定住宅の改正はありません。
③構造計算対象規模の拡大・縮小
今回の改正で、木造建築物の構造計算が必要な面積要件が強化されました。一方、高さについては緩和されました。
これまでは法6条区分で二号に該当すると構造計算が必須で、該当しなければ構造計算は原則不要でした。シンプルでした…。
木造建築物について、高さ13m超または軒高9m超で構造計算が必須だったのが、高さ16m超で必須となり緩和された。
木造建築物について、延床面積500 m2で構造計算が必須だったのが、300m2超で必須となり強化された。
構造種別、規模等などによる構造計算の要・不要は法20条に規定されています。今回の改正では、法6条に併せて法20条が改正されました。
図
法20条の解説は下記で確認ください。
リンク
④構造適判の特例の拡大
今回の改正で、小規模な建築物については保有水平耐力計算(ルート3)などの高度な構造計算を行った場合でも、構造適判が不要になりました。
通常、限界耐力計算、ルート3、ルート2といわれる構造計算を行なった場合は、建築確認に併せて構造計算適合性判定(いわゆる構造適判)を建築確認申請をする別の機関(構造計算適合性判定機関)で受ける必要があります。法6条の3で規定されています。
今回の改正で、法20条1項四号に該当する建築物(原則、構造計算が不要な建築物)について、構造設計1級建築士が限界耐力計算、ルート3、ルート2の計算またはその法適合を確認した場合、構造適判を省略することができるようになりました。
なお、適判の緩和については、平成26年の法改正でも行われています。ルート2主事と言われるものです。ルート2主事については引き続きあります。
ルート2主事とは、ルート2について審査側が構造1級などの資格を持った建築主事(審査員)が審査することで構造適判を省略することができるとったものです。
今回の改正ではルート2主事とは異なり審査側に特別な資格は必要ありません。
建築士法3条も改正されます
構造計算が必須な木造建築物の改正に合わせてだと思われますが、建築士法3条(1級建築士でなければ設計・施工監理できない建築物に関する規定)が緩和されました。2級建築士でも設計・施工監理できる建築物の範囲が拡大しました。
さいごに
最近の改正同様、木造建築物に関する基準の合理化などについての改正が大部分です。防火規定の合理化についてはまだ政令の改正がされていないため具体的な解説ができません。今後、改正案が出てきたら情報提供・解説をしていきたと思います。