この解説では次の疑問に答えます!!
- 構造計算ルート1の位置付け?
- 鉄骨造の構造計算ルート1は3種類ある?
- 鉄骨造の構造計算ルート1-1、1-2、1-3は何が違う?
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ルート1は「簡易な構造計算基準」
構造計算ルート1(以下「ルート1」とします。)は、法第20条第1項第3号の区分に該当する比較的小規模な建築物について適用される構造計算基準で、5種類ある構造計算基準うち最も簡易な構造計算基準です。
構造計算方法 | 条項 | 20条区分 | |
---|---|---|---|
① | 時刻暦応答解析 | 法第20条第1項第1号 →令第81条第1項 | 1号建築物 |
② | 限界耐力計算 | 法第20条第1項第2号イ →令第81条第2項第1号ロ | 2号建築物 |
③ | 保有水平耐力計算 (ルート3) | 法第20条第1項第2号イ →令第81条第2項第1号イ | 2号建築物 |
④ | 許容応力度等計算 (ルート2) | 法第20条第1項第2号イ →令第81条第2項第2号イ | 2号建築物 |
⑤ | 許容応力度計算 (ルート1) | 法第20条第1項第3号イ →令第81条第3項 | 3号建築物 |
その他 | 構造計算不要 (仕様規定ルート) | 法第20条第1項第4号 | 4号建築物 |
ポイント
ルート1は、法律上、法第20条第1項第3号の区分の建築物で、法第20条第1項第3号イの基準を適用して構造上の安全性を確認する建築物のことです。
鉄骨造のルート1の適用区分と基準
鉄骨造ルート1は、ルート1-1、ルート1-2、ルート1-3の3つに細分化されます。これらにはルート1-1、1-2、1-3に①共通で求められる条件・基準と、ルートごとに②異なる条件の条件・基準があります。
適用の分類 | 基準など | 根拠規定 | |
---|---|---|---|
① | 共通で適用される条件・基準 | 6条区分 | 法第20条第1項第3号 |
規模など | 法第20条第1項第3号 →令第36条の2 | ||
構造計算基準 (1次設計部分) | 法第20条第1項第3号イ →令81条第3項 | ||
仕様規定 | 令第81条第3項 | ||
② | ルートごとに異なる条件・基準 | 規模など | S55建告第593号 第1号イ〜ハ |
構造計算基準 (2次設計部分) |
鉄骨造ルート1の共通事項
鉄骨造ルート1-1、1-2、1-3で共通で適用される事項は、6条区分、規模など、構造計算基準(1次設計部分)、仕様規定です。
「6条区分」「規模など」の条件
規模等の共通の条件は次の表2の通りです。
規模等の条件 | ||
---|---|---|
① | 6条区分 :法第20条第1項第3号本文 | 1号建築物 または 2号建築物 |
② | 規模など :S55建告第593号第1号本文 (令第36条の2第2号) | 地階を除く3以下 かつ 高さ16m以下 |
注意
表2②の「規模など」は、ルート1-1、1-2、1-3ごとに異なる条件が付加されるので注意が必要です。(表5を参照ください)
構造計算基準(1次設計部分)
鉄骨造ルート1の構造計算基準のうち、1次設計部分についてはルート1-1、1-2、1-3を問わず同じ基準が適用されます。法第20条第1項第3号に基づき、令第82条第3項に定められています。
根拠規定 | 構造計算基準 | ||
---|---|---|---|
① | 令第82条第1号〜第3号 | 許容応力度計算(C0=0.2) | 1次設計 |
② | 令第82条第4号 | 使用上の支障が起こらないことの確認 | |
③ | 令第82条の4 | 屋根ふき材等の構造計算 |
ポイント
法律上、20条区分が3号建築物に求められる構造計算基準は、法第20条第1項第3号イまたはロの基準で、イの場合、表4①〜③の1次設計部分のみです。2次設計部分は、20条区分が3号建築物となるための条件である2号建築物に該当しないための条件として令第36条の2第5号に基づきS55建告第593号第1号イ〜ロに定められています。
1次設計と2次設計の解説についてはこちらを、ぜひお読みください。
仕様規定
仕様規定(技術的基準)は、ルート1-1、1-2、1-3問わず全ての仕様規定が適用されます。
ルート (構造計算基準) | 適用される仕様規定 (技術的基準) |
---|---|
ルート1 | 令第3章第1節〜第7節の2 (全ての仕様規定) |
参考
ルート3、限界耐力計算、時刻歴応答解析などの高度な構造計算で構造上の安全性か確認した建築物については、一部の仕様規定の適用が除外されます。
鉄骨造ルート1-1、1-2、1-3の異なる基準
ルート1-1、1-2、1-3ごとに異なる基準は表4の条件③(S55建告第593号第1号イ、ロ、ハ)の違いによるものです。
ルート | S55建告第593号第1号 |
---|---|
ルート1-1 | イ(1)〜(5) |
ルート1-2 | ロ(1)〜(8) |
ルート1-3 | ハ(1)〜(5) |
それぞれの具体的な基準(適用できる建築物、構造計算基準)で比較すると次の表のようになります。
構造計算ルート (S55建告第593号第1号) | ルート1-1 (イ) | ルート1-2 (ロ) | ルート1-3 (ハ) | |
---|---|---|---|---|
規模 (S55建告第593号第1号) | 高さ | 高さ13m以下 かつ 軒高さ9m以下 | 高さ13m以下 かつ 軒高さ9m以下 | ー (16m以下) |
階数 (地階を除く) | 3以下 | 2以下 | 3以下 | |
柱スパン | 6m以下 | 12m以下 | 6m以下 | |
延べ面積 | 500m2以下 | 500m2以下 (平屋は3000m2以下) | 500m2以下 | |
構造計算基準 (S55建告第593号第1号(2次設計部分)) | 偏心率 | ー | 要 | 要 |
筋かいλに応じた地震力割増 | ー | 要 | 要 | |
C0割増 | 要 (C0=0.3) | 要 (C0=0.3) | 要 (C0=0.3) | |
冷間成形角型鋼管柱の応力割増 | 要 | 要 | 要 | |
筋かいの保有耐力接合 | 要 | 要 | 要 | |
幅厚比(径厚比)の制限 | ー | 要 (FA種別) | 要 (FA種別) | |
柱・梁の継手・仕口の保有耐力接合 | ー | 要 | 要 | |
梁の保有耐力横補剛 | ー | 要 | 要 | |
柱脚の強度・靭性の確保 | ー | 要 | 要 | |
特定天井 | 要 | 要 | 要 |
本解説では、各基準の詳細の計算方法などについての解説は割愛させていただきます。
参考
ルート1-3は、R7.4.1の改正で追加されました。これまで鉄骨造は高さが13m以下しかルート1を適用できませんでしたが、一定の条件を満たすことで高さ16mまで適用することができるようになりました。
まとめ
- ルート1は比較的小規模な建築物に適用される最も簡易な構造計算
- 鉄骨造建築物のルート1は、ルート1-1、1-2、1-3の3つのルートがある。
- ルート1-1、1-2、1-3は共通で適用される規定と、それぞれ異なる基準で適用される規定がある。
- ルート1-3は、R7.4.1の改正で追加された。
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