本記事は法第20条の法文の読解に特化した解説です。

「区分」と「区分に応じた基準」(第1項)
第1項の条文構成と概要
法第20条では、建築物の構造耐力関係規定の適用について、4つの建築物の区分を定め、その区分に応じた基準が定められています。この区分は通称「20条区分」と言われます。
第1項の条文
- 青字、赤字 の斜体は条文を読みやすくするために追加しています。(原文にはありません)
- 長い条文の ピンクマーカー は主語・述語などのつながり表しています。(まずは、ピンクマーカー部分だけを読んでみてください)
- 一つの条文が複数の文章で構成されている場合は、// でひとつの文章の区切っています。
- 条文の全体を把握しやすくるため(カッコ内ははグレー)にしています。(かっこ内も重要ですが、まずは条文の全体を把握することが大切です)
- 接続詞が何を接続しているか 番号①、②… と 下線 でわかりやすくしています。(接続詞が何と何を接続詞しているかを間違えると間違って理解してしまいます)
- 水色マーカー は否定の文章を表しています。
- 太字 は重要な用語などを表しています。
(構造耐力)
第20条第1項 建築物は、自重、積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧及び水圧並びに地震その他の震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、当該各号に定める基準に適合するものでなければならない。
第一号 高さが60mを超える建築物 // 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準(←令第36条第1項)に適合するものであること。この場合において、その構造方法は、荷重及び外力によつて建築物の各部分に連続的に生ずる力及び変形を把握することその他の政令で定める基準(←令第82条第1項)に従った構造計算によつて安全性が確かめられたものとして国土交通大臣の認定を受けたものであること。
第二号 高さが60m以下の建築物のうち、①木造の建築物(地階を除く階数が4以上であるもの又は高さが16mを超えるものに限る。) 又は ②木造以外の建築物(地階を除く階数が4以上である鉄骨造の建築物、高さが20mを超える鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物(←令第36条の2)に限る。) // 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準(←令第36条第2項)に適合すること。この場合において、その構造方法は、地震力によって建築物の地上部分の各階に生ずる水平方向の変形を把握することその他の政令定める基準(←令第82条第2項)に従った構造計算で、①国土交通大臣が定めた方法によるもの 又は ②国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるもの によって確かめられる安全性を有すること。
ロ 前号に定める基準に適合すること。
第三号 高さが60m以下の建築物(前号に掲げる建築物を除く。)のうち、第6条第1項第一号又は第二号に掲げる建築物(木造の建築物にあつては、①地階を除く階数が3以上であるもの 又は ②延べ面積が300m2を超えるものに限る。) // 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準(←令第36条第3項)に適合すること。この場合において、その構造方法は、構造耐力上主要な部分ごとに応力度が許容応力度を超えないことを確かめることその他の政令で定める基準(←令第82条第3項)に従った構造計算で、①国土交通大臣が定めた方法によるもの 又は ②国土交通大臣の認定を受けたプログラムによるもの によって確かめられる安全性を有すること。
ロ 前二号に定める基準のいずれかに適合すること。
第四号 前三号に掲げる建築物以外の建築物 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準(←令第36条第2項)に適合すること。
ロ 前三号に定める基準のいずれかに適合すること。
第1項の条文解説
建築物を4つ区分(20条区分)に分け、この20条区分に応じて適用される基準が定められています。
基準は、技術的基準(仕様規定)と構造計算基準の2つあり、構造計算基準については安全の確認方法について定めれています。
20条区分の区分け
20条区分 | 条件① (高さ) | 条件② (その他) |
---|---|---|
第1号 | 60m超 | ー |
第2号 | 60m以下 | 以下の①〜⑥のいずれかに該当 ①地階除く階数4以上の木造 ②高さ16m超の木造 ③地階除く階数4以上の鉄骨造 ④高さ20m超の鉄筋コンクリート造 ⑤高さ20m超の鉄骨鉄筋コンクリート造 ⑥その他これらの建築物に準ずるものとして政令で定める建築物(→令第36条の2の各号) |
第3号 | 60m以下 | 6条区分が第1号または第2号区分の建築物で木造建築物は地階を除く階数3以上または延べ面積300m2(20条区分が第2号区分の建築物は除く) |
第4号 | 60m以下 | 20条区分が第1号、第2号、第3号以外の建築物 |
20条区分に応じた基準
20条区分 | 構造計算基準 | 仕様規定 | その他 |
---|---|---|---|
1号 | 時刻歴応答解析 (→ 令第81条第1項) | 仕様規定のうち 耐久性等関係規定 (→ 令第36条第1項) | 2号〜4号区分の建築物も適用できる |
2号-① (31m超) | 限界耐力計算 (→ 令第81条第2項第1号ロ) | 仕様規定のうち 耐久性等関係規定 (→ 令第36条第2項第1号) | 2号-②、③〜4号区分の建築物も適用できる |
2号-② (31m超) | 保有水平耐力計算 (→ 令第81条第2項第1号イ) | 耐久性等関係規定 と 耐久性等関係規定以外の一部の仕様規定 (→ 令第36条第2項第2号) | 2号-③〜4号区分の建築物も適用できる |
2号-③ (31m以下) | 許容応力度等計算 (→ 令第81条第2項第2号イ) | 全ての仕様規定 (→ 令第36条第2項第3号) | 3号〜4号区分の建築物も適用できる |
3号 | 許容応力度計算 (→ 令第81条第3項) | 全ての仕様規定 (→ 令第36条第3項) | 4号区分の建築物も適用できる |
4号 | ー(構造計算不要) | 全ての仕様規定 (→ 令第36条第3項) | ー |
構造計算基準に応じた安全の確認方法
20条区分 | 構造計算基準 | 安全の確認方法 |
---|---|---|
第1号 | 時刻歴応答解析 | 大臣の認定 |
第2号 | ・限界耐力計算 ・保有水平耐力計算 ・許容応力度等計算 | 大臣が定めた方法(→ H19国交告第592号) または 大臣認定プログラム |
第3号 | 許容応力度計算 | 大臣が定めた方法(→ H19国交告第592号) または 大臣認定プログラム |
「構造別棟」の時の第1項の適用(第2項)
本来、法第20条第1項の適用上1の建築物(通称「意匠上1棟」)であっても、エキスパンションジョイント(EXPJ)などで2以上に構造上分離されていれば、その部分ごとに法第20条第1項を適用することができる。
第2項 前項に規定する基準の適用上一の建築物であつても別の建築物とみなすことができる部分として政令で定める部分(←令第36条の4)が2以上ある建築物の当該建築物の部分は、同項の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。
↓↓↓令和7年4月1日大改正についてイラスト・マンガでわかりやすく解説されています!!