【1】制度規定

【建築基準法の基本がわかる】構造計算適合性判定(法第6条の3)

構造適判とは

法令集が手元にある方は、法令集を読みながら解説を読み進めると理解が深まります。

概要

  • 平成18年に姉歯事件を機に、構造審査の厳密化のためにできた制度です。いわゆる構造適判です。(法6条の3)
  • 計算書の偽造防止などの観点から建築確認において構造計算基準についてダブルチェックできる制度です。
  • 限界耐力計算保有水平耐力計算(ルート3)許容応力度等計算(ルート2)といわれる構造計算基準により安全確認をした建築物の確認申請においては、構造適判を受けなければなりません。(ルート1(許容応力度計算+α計算)でも必要な場合があります。)
  • 構造適判は、建築確認申請とは別の指定構造計算適合判定機関に申請します。(本来は都道府県に申請)(法6条の3、法18条の2)
  • 構造適判では、申請建築物が特定構造計算基準特定増改築構造計算基準)に適合しているかどうかの判定を行います。(法6条の3)
  • 構造適判の適合通知書が交付されなければ建築確認済証の交付がされません。(法6条6項)
  • 特定構造計算基準とは、限界耐力計算、保有水平耐力計算(ルート3)、許容応力度等計算(ルート2)の構造計算基準のことです。(厳密には安全確認方法によりますがルート1(許容応力度計算+α計算)の構造計算基準も含まれます)
  • 特定増改築構造計算基準とは、増改築で法20条が適用されない建築物について適用されるいわゆる限界耐力計算、保有水平耐力計算(ルート3)、許容応力度等計算(ルート2)の構造計算基準のことです。(新築同様に厳密には安全確認方法によりますがルート1(許容応力度計算+α計算)の構造計算基準も含まれます)
  • 特定構造計算基準(特定増改築構造計算基準)のうち、比較的容易に審査できるものは、構造計算適合性判定を省略することができます。いわゆる「ルート2主事」といわれる制度で、平成26年にできました。(法6条の3ただし書)

「構造計算基準」と「安全性の確認方法」に応じた「構造適判の要否」と「ルート2主事適用の要否」を表にまとめると以下のようです。

構造計算基準安全性の確認方法構造適判  ルート2主事
時刻歴応答解析大臣認定不要
限界耐力計算大臣が定めた方法不可
大臣認定プログラム不可
保有水平耐力計算
(ルート3)
大臣が定めた方法不可
大臣認定プログラム不可
許容応力度等計算
(ルート2)
大臣が定めた方法
大臣認定プログラム不可
ルート1
・許容応力度計算
・屋根ふき材等計算
・床使用上の支障がないことの確認
・H12国交告593号の規定
大臣が定めた方法不要
大臣認定プログラム不可

手続きの流れ

建築確認を建築主事等に申請、構造適判を構造適判機関に申請

② 建築確認・構造適判の質疑に対して追加説明・補正をする

③ 構造適判の適合通知書の交付を受ける

④ 構造適判の申請書(副)・適合通知(写)と建築主事等に提出

⑤ 建築確認の確認済証の交付を受ける

⑥ 着工

①について、建築確認と構造計算適合性判定(構造適判)の申請はどちらが先でも問題ないのですが、③と⑤につていは、間に④を行わなければならない関係上、構造計算適合性判定(構造適判)の適合通知を受けなければ建築確認済証の交付がされません。(法6条6項)

適判が必要なケース

(構造計算適合性判定)

第6条の3 建築主は、第6条第1項の場合において、申請に係る建築物の計画が…(…「特定構造計算基準」…)又は…(…)…(…「特定増改築構造計算基準」…)に適合するかどうかの確認審査(…)を要するものであるときは、構造計算適合性判定(…)の申請書を提出して都道府県知事の構造計算適合性判定を受けなければならない。ただし、…、この限りでない。

特定構造計算基準(特定増改築構造計算基準)の適合確認審査を要する場合、構造計算適合性判定を受けなければならない(法6条の3)

建築基準法において定められている構造計算基準のうち特定構造計算基準(法6条の3)または特定増改築構造計算基準(令9条の2)により安全を確認した建築物は、建築確認申請において、構造計算適合性判定を受けなければなりません。

構造計算適合性判定は、指定構造計算適合性判定機関に申請します。

法6条の3により、原則、都道府県が構造計算適合性判定を行うこととされていますが、法18条の2により都道府県は指定した構造計算適合性判定機関に事務を行わせることができるとされています。(現状は構造計算適合性判定の審査を行なっている都道府県はないと思われます。)

特定構造計算基準(特定増改築構造計算基準)とは

構造適判が必要となる特定構造計算基準(特定増改築構造計算基準)についてです。

特定構造計算基準とは、法20条に基づき適用される限界耐力計算、保有水平耐力計算(ルート3)、許容応力度等計算(ルート2)の構造計算基準のことです。厳密には安全確認方法によってはルート1(許容応力度計算+α計算)の構造計算基準も含まれます。

また、

増改築で法20条を適用せず法86条の7を適用する場合に増改築する部分に適用する限界耐力計算、保有水平耐力計算(ルート3)、許容応力度等計算(ルート2)の構造計算基準を特定増改築構造計算基準と言います。厳密には安全確認方法によってはルート1(許容応力度計算+α計算)の構造計算基準も含まれます。

新築の場合の構造計算基準については、法20条に基づき定められています。

一方、増改築で法20条について法3条2項を適用する場合、新築とは異なり法20条は適用されず法86条の7により適用する構造計算基準が定められています。

この違いにより特定構造計算基準と特定増改築構造計算基準の2つが定められています。ただ、結果として新築と増改築する部分については同じ構造計算基準が適用され、そのうち限界耐力計算、保有水平耐力計算(ルート3)、許容応力度等計算(ルート2)(安全確認方法によってはルート1(許容応力度計算+α計算)も含む)を特定構造計算基準(特定増改築構造計算基準)と言います。

特定構造計算基準

新築の場合または増改築でも既存不適格ではなく新築と同様に法20条を適用する場合は特定構造計算基準です。

(構造計算適合性判定)

法第6条の3 …第20条第1項第二号若しくは第三号に定める基準(同項第二号イ又は第三号イの政令で定める基準に従った構造計算で、同項第二号イに規定する方法若しくはプログラムによるもの又は同項第三号イに規定するプログラムによるものによって確かめられる安全性を有することに係る部分に限る。以下「特定構造計算基準」という。)…

✔︎ 法20条1項二号 ▶︎ 限界耐力計算、保有水平耐力計算(ルート3)、許容応力度等計算(ルート2)

✔︎ 法20条1項三号 ▶︎ 許容応力度計算+α計算(ルート1)

少しややこしいですが、

「法20条1項二号」の構造計算基準を適用する場合は、「法20条1項二号イに規定する方法」または「法20条1項二号イに規定する大臣認定プログラム」によって安全確認をするものが適判対象です。

一方、「法20条3項三号」の構造計算基準を適用する場合は、「法20条1項三号イに規定する大臣認定プログラム」によって安全確認するものが適判対象で、「法20条1項二号イに規定する方法」はによって安全確認をする場合は適判対象外です。

特定増改築構造計算基準

増改築で法20条について法3条2項が適用される既存不適格建築物で、法86条の7を適用される場合は特定増改築構造計算基準です。

結果として、構造計算基準と安全確認の方法は特定構造計算基準と同様です。

(構造計算適合性判定)

法第6条の3 …第3条第2項(第86条の9第1項において準用する場合を含む。)の規定により第20条の規定の適用を受けない建築物について第86条の7第1項の政令で定める範囲内において増築若しくは改築をする場合における同項の政令で定める基準(特定構造計算基準に相当する基準として政令で定めるものに限る。以下「特定増改築構造計算基準」という。)

「政令で定める基準」が令9条の2に規定されています。

(特定増改築構造計算基準)

令第9条の2 法第6条の3第一項本文の政令で定める基準は、第81条第2項又は第3項に規定する基準に従つた構造計算で、法第20条第1項第二号イに規定する方法若しくはプログラムによるもの又は同項第三号イに規定するプログラムによるものによつて確かめられる安全性を有することとする。

構造適判が省略できるケースもある?

法6条の3,1項にはただし書きがあります。このただし書きにより特定構造計算基準(特定増改築構造計算基準)を適用する場合においても、適判が不要となる場合もあります。(ルート2主事)

▶︎ 「ルート2主事(構造適判の省略)」の解説はコチラ

▶︎ 「許容応力度等計算(ルート2)」の解説はコチラ