【はじめに】
建築基準法は、法令集を読むだけでは理解できない規定が多々あり、誰しも次のような経験をしたことがあると思います。
- 読解するのに時間がかかる。
- 途中で読解をあきらめる。
- 誤解する。
これらを解決できるよう建築基準法に慣れていない方でも短時間で正しく理解できる内容となることを目標として記事を作成しています。特に、次のような方に読んでもらえると嬉しいです。
- 1級建築士試験などの建築基準法に関する出題のある資格試験勉強中の方
- 建築基準法が苦手な実務者
- 建築基準法を勉強したい建築初心者
建築士試験の勉強中の方や実務者は、建築基準法をみながら解説を読み進めてみてください。

地震力は外力のひとつ(令第83条)
地震力は、令第83条で規定されている構造計算で採用すべき荷重・外力のひとつです。令第83条で規定されている荷重・外力は、地震力のほかに固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風圧力、水圧・土圧・震動・衝撃(実況による)があります。
地震力(令第88条)
地震力の計算方法は令第88条で規定されています。地震力は、建築物の地上部分と地下部分で計算方法が異なります。また、規定しているものも異なるので注意してください。
- 地上部分の地震層せん断力 ▶︎ 令第88条第1項〜第3項
- 地下部分の地震力 ▶︎ 令第88条第4項
実務上は、計算のしやすさを考慮して「高さの部分ごと」は「層ごと(階ごと)」に置き換えて計算する!本解説でも「高さの部分ごと」を「層ごと」に置き換えて解説を進めます。
地上部分の地震力「Qi」(令第88条第1項)
地上部分のi層に作用する全体の地震力を「Qi」とすると、「Qi」の計算方法は令第88条第1項本文に規定されており、次の式で表されます。単位は「kN(キロニュートン)」または「N(ニュートン)」です。
なお、令第88条第1項本文をよく読むとわかるのですが、「Qi」はi層に作用する全体の地震力(いわゆる「地震層せん断力」)の計算方法です。(地下部分とは異なります。)
Qi = ΣWi × Ci
Ci = Zr × Rt × Ai × C0
▶︎ Qi = ΣWi × (Zr × Rt × Ai × C0)
- Z : 地域係数
- Rt : 振動特性係数
- Ai : 地震層せん断力係数の分布係数
- C0 : 標準せん断力係数
「ΣWi」は、令88条1項本文の「当該部分の固定荷重と積載荷重との和」を式で表したものです。(多雪区域では、必要に応じた積雪荷重を加えます。)
「Ci」は、令88条1項で「建築物の地上部分の一定の高さにおける地震層せん断力係数」と定義されています。「i層の地震層せん断力係数」とほぼ同義です。係数なので単位はありません。
式を見れば明らかですが、ΣWiが大きくなると地震力Qiはおおきなります。同様にCiが大きくなるとQiはおおきなります。
ΣWi の計算方法(令第88条第1項)
ΣWiは、令88条1項本文に規定されている「当該部分の固定荷重と積載荷重との和」です。次の式で表さます。ΣWiの単位は「kN(キロニュートン)」または「N(ニュートン)」です。
ΣWi = Wn + Wn-1 + Wn-2 + … + Wi
- Wi = DLi + LLi
- DLi : i層の固定荷重
- LLi : i層の積載荷重
例えば、地上5階建て(5層)の建築物の3階の「当該部分の固定荷重と積載荷重との(=ΣW3)」 は次の式で表されます。
ΣW3 = W5 + W4 + W3 = (DL5 + LL5 )+(DL4 + LL4 )+(DL3 + LL3 )
地震層せん断力係数 Ci (令第88条第1項)
「Ci」は建築基準法では「建築物の地上部分の一定の高さにおける地震層せん断力係数」と定義されています。「ΣWi」と同様に「i層(階)の地震層せん断力係数」とほぼ同義です。
「Ci」は4つの係数を掛け合わせた次の式で表されます。係数なので単位はありません。
Ci = Z × Rt × Ai × C0
- Z : 地域係数
- Rt : 振動特性係数
- Ai : 地震層せん断力係数の分布係数
- C0 : 標準せん断力係数
Z、Rt、Ai、C0(S55建告第1793号ほか)
Ci(i層の地震層せん断力係数)を構成する4つの係数については、それぞれ、告示・政令に求め方が規定されています。
- Z S55建告第1793号第1
- Rt S55建告第1793号第2
- Ai S55建告第1793号第3
- C0 令第88条第2項、第3項
地域係数 Z(S55建告第1793号第1)
Z(地域係数)は、地方における過去の地震被害や地震活動の状況などに1.0〜0.7まので範囲で、S55建告第1793号第1で定められています。
Qi = ΣWi × (Z × Rt × Ai × C0)なので、同じ建築物でも、0.7の地域は、1.0の地域に比べ、建築物に作用する地震力は0.7倍で良いということ!
振動特性係数 Rt(S55建告第1793号第2)
Rt(振動特性係数)は、建築物の固有周期、地盤の種類に応じて求めれる数値で、具体的にはS55建告第1793号第2で定められています。Rtは告示の計算により1.0〜0.8の数値となります。
具体的な計算方法については割愛します。
地震層せん断力係数の分布係数 Ai(S55建告第1793号第3)
Aiは、建築物の振動特性に応じて地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表す数値で具体的にはS55建告第1793号第3で定められています。建築物の固有周期と当該層が支える固定荷重・積載荷重を考慮して1.0以上の数値となります。
Aiは層ごとに決まる数値で上層の方が下層に比べ大きい数値になります。
Aiは他の係数と異なり1.0以上の数値で、いわゆる割増係数!
具体的な計算方法については割愛します。
標準せん断力係数 C0(令第88条第2項、第3項)
C0(標準せん断力係数)は令第88条2項、3項に規定されており、採用する計算方法により次のように定めれています。
- 原則 ▶︎ 0.2以上(令第88条第2項)
- 保有水平耐力計算 ▶︎ 1.0以上(令第88条3項)
例えば、S造のルート1のようにC0=0.3として許容応力度計算をすることが求められることもあるので注意!(H19国交告第593号)
地下部分の地震力「PB」(令第88条第4項)
地階部分に作用する地震力については、令第88条第4項に規定されており、地下部分のBi層に作用する地震力を「PB」とすると「PB」は次の式で求めらます。「PB」の単位は「kN(キロニュートン)」または「N(ニュートン)」です。
PBi= WBi × k
k = k≧ 0.1 × ( 1 – ( H / 40 ) ) × Z
- H : 各部分の地盤面からの深さ(20を超えるときは20)(単位 m)
- Z : 地域係数
「当該部分に作用する地震力」は「当該部分の固定荷重と積載荷重の和」に係数を乗じて求めます。
ここまでは建築基準法には規定されていませんが、構造計算をする際には、PBに加え地上部分から作用する「地震層せん断力」を考慮した地震層せん断力「QBi」を求める必要があり、例えば「QB1」次のように求められます。
QB1 = Q1 + ΣPB1

最後に
建築基準法は、慣れが必要です。逆に言うと、慣れてしまえばこれまで読んだことのない条文でも、自力で読解することができます。自力で読解できるようになると建築基準法を読解することが楽しくさえなります。
【step①】
- 解説を読む ▶︎ 条文を確認する ▶︎ 理解できる
【step②】
- 条文を読む ▶︎ 解説で確認する ▶︎ 理解できる
【step③】
条文を読む ▶︎ 理解できる ▶︎ 実務で活かせる
▼▼ フォローしていただけると嬉しいです ▼▼

↑↑建築士試験におすすめ法令集↑↑

↑↑建築士試験におすすめ法令集↑↑
↑↑構造関係規定の解説書の定番↑↑