【2】単体規定

採光無窓居室の不燃区画の緩和(法35条の3)

採光無窓居室の不燃区画のカ緩和

法35条の3の規定により、「採光無窓居室」は、原則、「その居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画」しなければなりません。

ただし、この規定には緩和規定が3つあり、この緩和規定を適用することで「採光無窓居室」であっても「その居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画する措置」を不要とすることができます。

今回はこの2つの緩和規定について解説します。1つ目は法35条の3ができた時点からありますが、2つ目・3つ目はそれぞれ令和2年・令和5年にできた比較的新しい緩和規定です。

★ 令和5年にできた緩和規定の国土交通省がだしている資料(パワポ資料)はコチラ(23ページ)で見ることができます。

法35条の3の採光無窓居室の制限(簡単に解説)

法35条の3の規定により、「採光無窓居室」は、原則、「その居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画」しなければなりません。

ここでいう「採光無窓居室」とは、法35条の3に基づき令111条1号・2号に定められる「採光上有効な開口部」を有しない居室のことです。

令111条1号・2号に定められる「採光上有効な開口部」の具体的な基準については、下の表1の通りです。逆にいえば、1号・2号のいずれの開口部を有しない居室は法35条の3における「採光無窓居室」となります。

表1 「採光上有効な開口部」とは(1号または2号)
規定基準
令111条1号採光上有効な開口部の面積(※1)の合計 ≧ 居室の床面積 × 1/20」の開口部
2号直接外気に接する避難上有効な構造で、直径1mの円が内接 または 幅75cm以上・高さ1.2m以上 の開口部
(※1)採光上有効な開口部の面積の算定は令20条による

法28条の規定により、義務採光が求めれる居室は注意

「採光無窓居室は主要構造部を耐火構造・不燃材料で区画すればそれでOK」かというとそうではありありません。居室の種類によっては、法28条の規定による採光が求められ、この法28条の規定による採光は原則緩和がなく、居室の種類に応じた採光上有効な開口部を設けなければなりません。

また、避難規定では、歩行距離(令120条)など法35条に基づいて令116条1項1号に規定される採光無窓居室に対して制限を付加する規定もあるので注意が必要です。

一般構造の採光
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緩和規定は2つ!!

緩和規定は2つあります。

一つ目は、劇場など建築物の用途による緩和規定で、劇場などの居室のは令111条の「採光無窓居室」であっても「居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画する措置が不要」となります。(法35条の3ただし書)

二つ目は、「避難上の措置」による緩和規定で、この「避難上の措置」をすることで令111条の「採光無窓居室」であっても「居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画する措置が不要」となります。(法35条の3ただし書)

【緩和1】用途による緩和(法35条の3ただし書)

法別表1(1)の用途の居室につていは、令111条の「採光無窓居室」であっても「その居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画する措置が不要」となります。具体的な法別表1(1)の用途は下の表2の通りです。

表2 耐火構造・不燃材料の区画不要な用途
条項用途の種類
法別表第1(1)劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場その他これらに類するもので政令で定めるもの(政令は未制定)

【緩和2】避難上の措置による緩和

R2国交告249号に定められている「避難上の措置」をした居室は、令111条の「採光無窓居室」であっても「その居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画する措置が不要」となります。

「避難上の措置」の方法は、R2国交告249号1号または2号2つの方法があります。

1号の緩和規定は令和2年にできたもので、「居室の大きさ」や「居室から屋外へ出口」までの歩行距離の制限」があり、比較的小規模な建築物の小規模な居室に適用することが想定されています。

一方、2号の緩和規定は、令和5年にできたもので、1号に比べ幅広い居室にも適用できすることができます。ただし、1号と比べて多く措置が求めらます。

避難上の措置①(R2国交告249号1号)

R2国交告249号1号に基づく「避難上の措置」による緩和規定(本解説では「避難上の措置①」とします)は、令和2年にできた緩和規定で、居室の床面積が30m2以下の小規模な居室であることや「歩行距離の制限」もあり、小規模な建築物の小規模な居室に適用することが想定されています。

具体規定には下の表3の1〜3の基準を満たすことで緩和を適用することができます。

表3 避難上の措置①
基準R2国交告249号1号
1居室の条件床面積が30m2以内の居室(※1)
(寝室、宿直室などの就寝の用に供する居室は適用不可
1号イ
2歩行距離の条件居室が避難階の場合居室の各部分から「屋外への出口」までの歩行距離が30m以下1号ロ
居室が避難階の直上または直下の場合① または ② のどちらかに該当
① 居室の各部分から避難階の「屋外への出口」までの歩行距離が20m以下
② 居室の各部分から屋外避難階段までの歩行距離が20m以下
1号ハ
3居室の措置居室に自動火災報知設備(※2)の設置1号本文(2号ヘ)
(※1)寝室、宿直室などの就寝の用に供する居室は除く
(※2)令110条の5の基準に適合する自動火災報知設備

避難上の措置②(R2国交告249号2号)

R2国交告249号2号に基づく「避難上の措置」による緩和規定(本解説では「避難上の措置②」とします)は、「避難上の措置①」の緩和規定とは異なり居室の面積制限・歩行距離の制限がないため、大規模な建築物の大規模な居室にも適用することができます。

ただし、「避難上の措置①」と比べて適用できる居室の種類の条件が厳しく、さらに廊下等の不燃区画やスプリンクラー設備等の設置が必要など緩和を適用するためのハードルが少し高めです。

具体的には下の表4の1〜7の基準を満たすことで緩和を適用することができます。

表4 避難上の措置②
基準R2国交告249号
1居室の条件①〜④以外の居室
① 寝室、宿直室その他就寝の用に供する居室
② 病院、患者の収容施設ある診療所の居室
③ 児童福祉施設等(通所のみの利用は除く)の用に供する居室
④ 地階の居室
2号イ
2廊下等の区画等の措置
または
① 居室から直通階段(※1)に通ずる廊下等が不燃材料でつくられたまたは覆われた壁・不燃材料でつくられたまたは覆われた戸(※2)で区画2号イ
② 居室から直通階段(※1)に通ずる廊下等がスプリンクラー設備等(※3)を設けた室(火災の発生のおそれが少ない室は除く)以外の室に面しなない
及び
廊下等にスプリンクラー設備等(※3)が設けられている
3直通階段の措置屋内の直通階段の場合…準耐火構造 または 防火設備(両面20分)(※3)で区画2号ロ
屋外の直通階段の場合…
屋内から屋外の直通階段に通ずる出入口に防火設備(両面20分)(※3)の設置
4避難階の措置避難階の直通階段から屋外への出口に通ずる廊下等(※4)準耐火構造 または 防火設備(両面20分)(※3)で区画2号ハ
5廊下等の措置廊下等が火災の発生のおそれのない室であること。

〈緩和規定〉
廊下等が不燃材料でつくられたまたは覆われた壁・不燃材料でつくられたまたは覆われた戸(※1)で区画され、火災発生時の避難の安全が検証(※5)がされたときはこの限りでない。
2号ニ
6非常用照明の設置居室 及び 居室から屋外に通ずる廊下等(採光上有効に直接外気に開放された部分を除く)に非常用照明の設置2号ホ
7警報設備の設置居室に自動火災報知設備(※2)の設置2号へ
(※1)令112条19項2号イ・ロの構造の戸
(※2)スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、泡消火設備その他これらに類するもので自動式のもの
(※3)令112条19項2号イ・ロの構造の防火設備(両面20分)
(※4)火災の発生のおそれが少ない廊下等 または スプリンクラー設備等を設置した廊下等
(※5)R2国交告249号2号ニ(1)〜(3)の検証

まとめ

  • 法35条の3の「採光無窓居室」の緩和規定は3つある。
  • 一つ目は、劇場等による緩和規定で、劇場等の用途であれば採光無窓居室であっても「居室を区画する主要構造部を耐火構造または不燃材料で区画する措置が不要」です。
  • 2つ目は、「避難上の措置」をすることによる緩和規定で、R2国交告149号1号によるもの(本解説では「避難上の措置①」)とR2国交告149号2号によるもの(本解説では「避難上の措置②」)の2つの措置の方法がある。
  • 「避難上の措置①」は、令和2年にできた緩和規定で、床面積が30m2以下の居室にしか適用できない。また、居室から屋外への出口までの歩行距離の制限がある。
  • 「避難上の措置②」は、令和5年にできた緩和規定で、居室の床面積に制限はないが、「避難上の措置①」に比べその他の制限が厳しい。

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