通称「がけ条例」は、がけに近接する建築物の安全を確保するための規定で、建築基準法40条に基づき自治体が定める条例のひとつです。 建築設計だけでなく不動産取引でも重要なため、基本を押さえておくことが欠かせません。

本記事では、がけ条例の押さえるべき基本ポイントを【基本】として、また実務で特に誤解が多い注意すべきケースを【応用】としてまとめています。 この記事を読めば、がけ条例の判断プロセスと、地域差による基準の違い、そして現場で見落としやすいポイントを体系的に理解することができます

【基本】 がけ条例の押さえるべきポイント

がけ条例の基本となる押さえておくべきポイントを2つ解説します。

point 1 検討する“順序”が大切

通常、がけ条例は次の3つの点から規定されています。

  • がけ条例が適用されるがけとは(高さ)
  • がけ条例の制限を受ける範囲
  • どんな安全対策をしなければいけいのか

これら3つの点を踏まえると、がけ条例の検討は次の図のように順序立てて整理することができます。

がけ条例の適用の検討
① がけ条例が適用される「がけ」があるか?

簡単な話ですが、建築物または敷地の周囲にがけ条例が適用されるがけがなければ、がけ条例は適用されません。

がけ条例が適用されるがけとはどのようながけかを理解していなければ間違った判断をしてしまいます。

よって、まずはがけ条例が適用されるがけを正しく理解することが大切です。

② 建築物(敷地)が適用される範囲にはいるか?

建築物または敷地の周囲にがけ条例が適用されるがけが存在していても、その建築物や敷地が「がけ条例の適用範囲」に入っていなければ、がけ条例は適用されません。

がけ条例の適用範囲は自治体により異なりますが、例えば愛知県内では、がけの高さの2倍の水平距離以内が適用範囲です。

つまり、安全対策の一種でもありますが、がけから一定の距離が確保されていれば、がけ条例による安全対策は不要となります。

安全対策の検討

建築物(敷地)の周囲にがけがあり(①)、建築物(敷地)が適用範囲に入る(②)場合には、がけ条例に基づく安全対策が必要です。

安全対策の方法としては、主に次の3つの方法が考えれます。

  1. 擁壁等で安全ながけとする。
  2. がけが崩れても安全な建築物とする。
  3. がけをがけ条例が適用されるがけでなくす。

がけで対策するか。建築物で対策するか。

point 2 地域によって基準が異なる

ここまでがけ条例の基本的な内容を解説してきました。基本な内容については地域による大きな違いはありません。

ただし、がけの定義や安全距離、擁壁の扱いなどの基準は地域によって異なります。 その理由は、上述していますが、がけ条例は建築基準法40条に基づき地方公共団体が独自に定めているためです。

例えば、神奈川県では高さ2.5mのがけはがけ条例(神奈川県建築条例第3条)が適用されませんが、愛知県ではがけ条例が適用されます。また、がけ上の適用範囲2hの起点も異なります。

神奈川県のがけ条例(神奈川県建築基準条例6条)のイメージ図
愛知県のがけ条例(愛知県建築基準条例8条)のイメージ図

主な地域のがけ条例の適用されるがけの条件と適用範囲について下記の表のとおりです。詳細は行政のHPでご確認ください。

地域(条例)がけの条件適用範囲
高さ角度
東京都(建築安全条例6条)2m30°高さの2倍
(下端から)
神奈川県(建築基準条例3条)3m30°高さの2倍
(がけ上は下端、がけ下は上端から)
横浜市(建築基準条例3条)3m30°高さの2倍
(下端から)
愛知県(建築基準条例8条)2m30°高さの2倍
兵庫県(建築基準条例2条)30°高さの1.5倍
(中心から)
神戸市(建築安全条例20条)1m30°がけ上:下端から30°の面の上方
がけ下:下端から1.5倍

※なお、横浜市では、神奈川県のがけ条例は適用されず、横浜市のがけ条例だけが適用されます。同様に、神戸市では、兵庫県のがけ条例は

【応用】注意すべきケース

基本的なポイントを押さえたうえで、ここからは実務で特に遭遇しやすい「注意すべきケース」をいくつか取り上げて簡単ではありますが解説します。

※ここからの解説は個人的な見解も含まれますので、実務においては、あくまでも参考としていただき、詳細は、特定行政庁や建築主事等に確認してください。

① 建築敷地外にがけがある場合も対象となるのか。

対象となります。がけ条例自体を読めばわかりますが、建築敷地内に限ったものではありません。

② がけ条例は適用されるエリアで指定されているのか。

エリアで指定されるものでありません。東京都のがけ条例(東京都建築安全条例6条)であれば東京都全域、愛知県のがけ条例(愛知県建築基準条例8条)であれば愛知県全域で建築物の敷地やその周囲に、各条例で定めらるがけがあればがけ条例が適用されます。

③ 道路や河川、公園のがけも対象となるのか。

対象となります。公的なものであれば安全ながけである可能性が高いと思われますが、がけ条例の観点から安全ながけがどうかの判断は必要となります。

④ 建築基準法の検査済証、盛土規制法(旧宅造法)の検査済証があれば安全ながけか。

安全ながけとは限りません。安全ながけである可能性は高いと思われますが、経年劣化や検査時から状況が変わっている可能性もあるので注意が必要です。

【まとめ】がけ条例の基本と注意点

がけ条例のポイント(基本)

  • 検討は順序が重要 ①適用されるがけがあるか、②建築物(敷地)が適用範囲に入るか、③必要な安全対策をどう講じるか
  • 適用されるがけの理解が最初の必須ステップ → 高さ・勾配・地盤・擁壁の状態から総合的に判断する。
  • 適用範囲は自治体により異なる → 例:愛知県は「高さの2倍の水平距離以内」。
  • 安全対策は主に3種類 ①擁壁等で安全ながけにする、②建築物側で安全性を確保する、③がけ自体を条例対象外の状態にする → がけで対策するか、建築物で対策するかを選択する。
  • 地域差が大きい点に注意 → がけの定義、安全距離、擁壁の扱いなどは自治体ごとに異なる(法40条に基づく独自条例のため)。
  • 地域ごとの基準例(東京都・神奈川県・横浜市・愛知県・兵庫県・神戸市) → 高さ・角度・適用範囲の起点が異なるため、必ず自治体の条例を確認する。

注意すべきケース(応用)

  • 敷地外のがけも対象 → がけ条例は敷地内に限定されない。
  • 適用エリアの指定はない → 東京都全域、愛知県全域など、自治体が区域を限定せず運用している。
  • 道路・河川・公園のがけも対象 → 公的管理でも安全とは限らず、現況の危険性を確認する必要がある。
  • 検査済証があっても安全とは限らない → 経年劣化や周辺環境の変化により、現況の安全性が損なわれている可能性がある。

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